学生フォーミュラ日本大会2022 4日目レポート

学生フォーミュラ日本大会2022 4日目レポート

最終競技、エンデュランスが始まりました。3年のブランクを乗り越え完走を果たしたチームはどこだ?

4日目からはエンデュランス-最後の競技

この日はエンデュランスとフォローアップ走行が行われました。

10周-ドライバー交代-10周の走行をするエンデュランス。チームにとっては1年間の設計・製作の集大成、最後の競技です。

配点も大きく、計20周を完走できるかがかなり大切になってきます。長丁場の走行による熱で悪影響は出ないか、燃料が最後まで持つのか、この点がしばしば要点になります。

前日のオートクロスに出場したチームのみが出走でき、出走順はそのオートクロスの順位で決まっています。この日はオートクロス順位の19~33位(EV除く)までのマシンが走りました。

また、フォローアップ走行は、期日までにシェイクダウン証明を提出できなかったチーム、もしくは期限までに車検を通過できなかったチームが、3年ぶりの大会で走行機会を得られるように設けられました。

こちらは5周-ドライバー交代-5周の計10周(5周のみでもよい)の走行でした。残念ながら動的競技に出られなかったチームは多く、少しでも本番の地エコパで走行したい様子で集まっていました。

エンデュランス枠1:まさかの関西2台が同時にストップ

エコパでは早朝に雨が降り、朝はうっすらウェットとなっていました。しかし日が出たおかげで、エンデュランスが始まる頃にはおおまかにドライコンディションになっていました。

・1走目 – #48ホンダテクニカルカレッジ関東(完走)

注目の1走目になったのは、ホンダ関東でした。1日目で車検を通過、2日目はプラクティスをするなど、ここまで順調に準備を進めてきました。

燃費に関しては、タンクを大きくしたもののそれでも不安で、特にGが掛かった状況で心配が大きかったようです。また、路面コンディションを見計らって内圧を下げたセッティングをしたそうですが、これがうまく当たっていたようです。

多くのラップを72秒前後でまとめ、「戻ってくることだけを考えた」という走りで見事完走を果たしました。初っ端からいい雰囲気を作り出します。

・2走目 – #16九州工業大学(エンジンが掛からず、のちに再走)

そのホンダ関東の裏で、九工大がトラブルを抱えていました。

この時になってエンジンが掛からず。制限時間を超えスタートできなかったため、この日のうちに再走することとなりました。正規の時間にスタートできなかったことで、ペナルティが付く予定です。

祈るチームメンバー、しかしこの時エンジンがかかることはなかった

・3走目 – #24日本大学理工学部(完走)

日大理工は車検に苦しんだチームのひとつです。

2日目の終わりに技術車検をで合格をもらうと、3日目はチルトやブレーキ試験を何とか終わらせ、オートクロス終了10分前に滑り込み。ギリギリでエンデュランス出走権を確保しました。

燃費に不安を抱えつつ走行し、1人目のドライバーはなんとノンペナルティで走り切りました。

ドライバー交代も順調に終え2人目にスイッチしますが、6周目にガス欠症状が発生。それまで70~80秒台で走行してきたものの、燃料タンク担当でもある第二ドライバーは燃費走行に切り替え、80秒を超えるタイムで完走を目指します。

最後は待つメンバーも言葉少なに見守る中、ついに20周のゴールを果たしました。

ちなみに走行後の燃料残量測定では、3Lもの残量があることが判明。ガス欠症状は別の要因のようで、少し残念そうでした。

・4走目 – #51東京都立大学(完走)

エコパ2度の試走会にどちらもマシンを持ち込みましたが、いずれもトラブルでほとんど走れずでした。しかし、大会に向けてはキッチリ合わせてきて、2日目にプラクティスをする余裕もあるほど順調でした。

バッテリーやチェーンに心配を抱えながらも走行を続けていると、90秒台だったタイムが急に150秒台に、そして100秒程度での周回になります。しかしこれは重たいステアリングによるドライバーの疲労が原因。第一ドライバーは、マシンを降りると倒れこむほど疲れ切っていました。

重たいステアリングと闘いながらも第ニドライバーが80秒台で周回。ドライバーチェンジの際に水漏れも発生していましたが、大会に来てエンジンの調子が良くなったなどいい流れに乗れていた都立大。最終ラップでベストタイムを出し、無事に完走を果たしました。

車検突破が目標だったというこのチームは、大収穫で競技を終えました。

・5走目 – #15同志社大学(完走できず、17周)

ブレーキ試験などは3日目に回りましたが、ここまで全競技でタイムを残してきている同志社大。

エンデュランスでは完走を目標に、燃費に不安を持ちつつ10周をクリア。ドライバー交代や再始動も問題なく、元全日本カートで結果を残してきたという第二ドライバーに託します。

順調に80秒台で走行をしてきましたが、18周目、急にマシンが停止。そのまま赤旗となり、完走には至りませんでした。

原因はフロントブレーキのロック。タイヤが固まってしまい、走行が不能になってしまいました。

・6走目 – #1神戸大学(完走できず、17周)

同志社大と同時に走り、同じタイミングでストップしたしまったのが、神戸大でした。

今年はシェイクダウンが8月半ばに遅れたものの、「信頼性抜群」のコンセプトで、マシン完成直後の試走会も大きなトラブルなくテストを続け、この大会に挑みました。

しかし、10周終了しドライバー交代の後、マシン後部から白煙が見え、オレンジボール旗(整備命令)が出ます。この時は検査員の判断で失格とはせず、様子を見ることに。再度走り出します。

すると17周目、同志社大が止まった直後にストップします。この時は急にパワーを失い、ついにはマシンストップ、再始動もできなかったそうです。

起きたことのないトラブルでメンバーは肩を落としていました。燃調かガス欠かと予想していましたが、その後の排気ガス測定ではエンジンが始動。ガス欠だったとみられています。

エンデュランス枠2:未完走も目立つも、印象的な混走が行われる

10時20分、休憩を終え2枠目の時間になりました。

・7走目 – #19ホンダテクニカルカレッジ関西(完走できず、10周)

こちらも8月半ばのシェイクダウンとなったホンダ関西。

アルミフレーム、単気筒エンジン、小さいマシンと素晴らしいパッケージに見えますが、実はフレーム含め多くが昨年のマシンから引き継いだもの。今年から授業カリキュラムを外れ部活動になり、コロナ禍もあり引継ぎがなく、ほとんど手探りの状態でやってきたという実質1年目のチームなのです。

それでもスキパ・アクセラでタイムを残し、無事エンデュランスまでたどり着きました。

順調に80~90秒台で周回を重ね、いざドライバー交代を迎えます。しかし、エンジンの再始動がでず、このままリタイアとなってしまいました。

単気筒ということもあり元々始動性に問題を抱えていたとのこと。ここまでの度重なるエンジン始動でセルを使いすぎ、ここ一番で寿命を迎えてしまったそうです。

・8走目 – #8新潟大学(完走)

緑が映えるチームは、2日目にブレーキ試験まで終え、スキパ・アクセラ、そしてオートクロスでもjyン町にタイムを残してきました。

エンデュランスでは、マシンが足回りに設計上の問題を抱え、ヨコハマの溝付きタイヤで走行。苦しそうなスキール音が度々聞こえてきました。さらに燃費がかなり悪いこともあり、燃料タンクを大きくしたものの懸念を持ったままの走行でした。

それでも第一ドライバーは80秒台、第二ドライバーは70秒台で周回。最後はパイロンを挟んだままでゴールし、完走を果たしました。問題だった燃費も予想を上回っており、上々の走行となりました。

完走を抱き合って喜んでいた

・9走目 – #46日本大学生産工学部(完走できず、10周)

前回からエンジンを変更したというこのチーム。タイヤはフージャーではなくダンロップを選択しエンデュランスへ臨みました。

第一ドライバーは80秒前後で安定した周回。コーンを跳ねずノンペナルティで10周を走り切ります。

しかし、ドライバー交代後の再始動でセルが回らず。ここでリタイアとなってしまいました。バッテリー電圧が原因とも言い切れない、初めてのトラブルでした。

必死に始動を試みたが…

8月エコパの試走会では電気系トラブルで全く走れず、20kmもの走行は初めてだったそうで、しょうがないという様子でした。「車検を通過できただけでも十分」と前を向いていました。

・10走目 – #32久留米工業大学(完走)

1日目に車検をクリア、2日目にはプラクティスも始め、スムーズに進んでいた久留米工業。

エンデュランスではドライバー交代の直前に一時マシンストップしますが、再スタート。交代も順調に終え、残りの10周に入ります。「ちょっとなにも言えない」と、周回を見守るメンバーは緊張の時間が続きます。

しかし結局、このままトラブルなく無事20周を終えました。あとで聴くと、そもそも車検通過自体が驚きだったそうで、さらにエンデュランスは走り切れないと思っていたそうです。先のマシンストップも、エンジンをストールさせてしまっただけだったそうです。

フェンス外でも喜びが爆発

まさに望外の結果。地理的不利な九州から、貨物列車でマシンを運び参戦した、その苦労が報われた瞬間でした。

・11走目 – #9東京大学(完走)

この大学は、次のトヨタ名古屋と混走しましたが、この2台は我慢に我慢の周回を同時にこなした、この日のハイライトともいえる走行を見せてくれました。

東大と言えば、ターボやCVTといった独自のパッケージで有名です。しかし今年はターボのトラブルに時間を取られ、CVTの調整の時間が少なくなってしまっていました。

さらに、エンジンを取ってきているスクーターの生産が終わり、このエンジンが最後かもしれないそう。そんな中での最終競技でした。

前述の通りCVTの調整が完璧ではなく、エンデュランス開始直後からレブリミットに当たってしまっていました。途中からセミオート変速での走行に切り替えていたそうです。さらにステアリングが重くドライバーが疲労困憊、タイムにも影響が出て、一時は追い抜いた混走相手に、青旗掲示で追い抜きをされます。

ドライバー交代後はさらに症状は悪くなり、ついには停車してしまいます。それでも何とか再始動。ただ直ることはなく、幾度も止まっては再始動を繰り返し、20周の完走を目指します。

ニュートラル制御の調子が悪かったそうで、何度も何度も、何度も何度もマシンストップしていました。しかし、最後は無事完走。関東で一番静的審査が良かったチームが、20周を走り切りました。

・12走目 – #29トヨタ名古屋自動車大学校(完走)

東大と一緒に、トラブルで止まりつつも着実な20周劇を見せてくれたのが、このトヨタ名古屋でした。

大会前から燃料系にトラブルを抱え、全日までエンジンの始動が難しかったそうです。それでも大会に入ると嘘のようにエンジンが復調。そして前日のオートクロスまで順調にタイムを記録してきました。

第一ドライバーの時からスロー走行やマシンストップがあったり、走行経験が少なくギアアップに苦しんでいるような音が聞こえますが、まずは10周を走り切ります。第ニドライバーの時には燃料の不送は悪化。アクセルにエンジンが全く反応しないこともあったそうです。

しかし、何回も、何回もスローダウンを経ながら、苦労苦労でエンデュランスを完走しました。

この混走は、3年ぶりの大会の苦難を表す印象的な走行となりました。

食い入るように走行を見守る、一喜一憂しながら

エンデュランス枠3:黄・青・赤、困難と余裕もいいコントラスト

・13走目 – #34広島工業大学(スタートできず)

前日、残り10秒でオートクロスに出走。すんでのところでエンデュランス出走権を得た黄色のチーム。

ですが、この日はエンジンが掛からず、スタートすらできずに終えることとなります。

この時、セルモーターがフライホイールに噛まなく、エンジンが始動できなかったそうです。ピットでエンジンケースを外して作業するも、修復できずに時間切れとなってしまいました。

大会5日前にハブが破損し、なんとか作り直し間に合った広工大。まずはエンデュランスのスタート地点に立てたことだけでも感謝し、来年の雪辱を誓っていました。

・14走目 – #25帝京大学(完走)

車検をほぼ最初に通過し、多くの競技では先頭切って登場した帝京大。ここまではかなり順調に大会を過ごしてきました。

このエンデュランスでもその流れは変わらず。完走を果たしました。

プラクティスの時からスピンを多発していましたが、デフロックのマシンは周回中も何度かスピンを喫していました。しかし、ガス欠等他の心配はなかったようで、終始楽しそうに見守る中、マシンはゴールまで帰ってきていました。

・15走目 – #14九州工業大学(完走)

2走目予定だった九工大は、午後になり戻ってきました。エンジンはかかるようになったようです。

無事スタートすると、80~90秒台のタイムで周回をしました。ドライバー交代も問題なく終え、第二ドライバーに託します。見守るメンバーは落ち着かない様子。無意識に祈るしぐさもありました。

ただ。最後まで問題なく周回し、無事完走。実はエンジン自体は午前中から何も変えていないそうですが、追い込まれた状況で思いが届いたのか、なんとエンジンが始動してくれたとのことでした。

テストランは多くはなかったものの、20kmのエンデュランス想定のテストはできたそうで、それが実り、エンデュランス感想を果たしました。静的審査の順位も良く、目標のシングルナンバー入りの可能性が見えてきています。

フォローアップ走行:完走車両はなかった

エンデュランスの時間が終わると、15時からはフォローアップ走行がありました。シェイクダウン証明が提出できなかった、車検完了が間に合わなかったチームの走行機会です。

#2 大阪大学

静的審査ではどれも一桁順位、デザインファイナルにも出場した大阪大は、残念ながら車検が間に合わず、どの動的競技でもタイムを残すことはできませんでした。

技術車検自体も遅れたものの、特にブレーキ試験で大きく躓き、3日目に目の前でタイムアップを迎えていました。

走行自体も、3周目にマシンストップ。再始動することなくリタイアとなりました。メータ表示もおかしくなっており、電気系のトラブルとみられています。

#41 福井工業大学

福井大はシェイクダウンはできたものの、そこからテストランができずに大会へ。ぶっつけ本番での走行となりました。

ドライバーもブレーキ試験が初めての走行だったというほど何もできずに臨んだそうで、この段階で時間がかかっていしまい。そのまま車検期限を迎えてしまったそうです。

フォローアップ走行の際も、マシン後部から白煙を発生させてしまいリタイアとなりました。「試走会(テストラン)をする大切さがわかった」と悔しそうに話していました。

#49 岡山大学

岡山大は8月半ばの関西試走会でシェイクダウンをしましたが、この大会での競技出場は叶いませんでした。

2日目に車検を終えるも、燃調がうまくいかなくエンジンが掛からず。3日目の車検期限に間に合わなかったそうです。

フォローアップ走行では5周走行しドライバー交代するも、ここでエンジンが始動せず。リタイアとなりました。ニュートラルに入り辛い問題もあり、走りだせませんでした。

#39 東京理科大学

8月のエコパ試走会でも走れなかった理科大は、大会でも動的競技には出られませんでした。

このフォローアップ走行では、5周走行しドライバー交代までこぎつけるも、その時点で水温センサー不調、オーバーヒートかエンジンの調子も悪くなってしまいます。交代して走り出すも3周目にマシンストップ。この時に電圧不足で再始動できず、リタイアとなりました。

#35 明星大学

カラフルなマシンが特徴のこのチームも、騒音試験で躓いてしまったそうです。ホームセンターでモノを買って対策し、このフォローアップ走行にこぎつけました。

「マシンが走っているところを見るのも初めて」というメンバーもいるような状況で、マシンは2周目にストップ。リタイアとなってしまいました。

#E04 静岡大学

EV初参戦チームの、初年度全競技完走を目標にやってきたものの、1競技も出られなかった静岡大学。3日目にEV車検やレインテストをクリア、この日の午前にブレーキ試験を突破し、フォローアップ走行に臨みました。

しかし、1周も終えることなくマシンストップ。IMDが作動してしまったことが原因だそうです。

静岡大学SUMの大会後インタビュー

#31 立命館大学

技術車検が3日目に通過したものの、ブレーキ試験で苦しみ、競技に間に合わなかったという立命館大。エアロは、よく見ると粗があると話すも、かっこよく出来上がっています。

フォローアップ走行では燃調がうまく行ってないことからエンジンストールし、焦った結果バッテリー電圧が足りなくなり、リタイアとなってしまいました。

最終日、エンデュランスファイナルと結果発表!

大会は早くも最終日を迎えます。

これまでより早い7時30分からEVのエンデュランスが始まり、休憩を挟みICVのエンデュランス。そして、12時30分からはエンデュランス・ファイナル6、大会の大一番を迎えます。

そして、16時からは最終結果の発表と、表彰式です。また、2日目に予定されていた集合写真の撮影もあります。

土曜日ですから、観客の数も一気に増えるでしょう。天気も晴れ予報、熱い一日がやってきます。

大会5日目午前

大会5日目午後

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