2022大会

EV参戦1年目インタビュー – 静岡大学「 SUM」

2022年大会は、注目トピックとして「過去最多のEV参戦校」がありました。国内の計14チームがエントリー。そのうち静岡大学、愛知工業大学、上智・青山学院大学、横浜国立大学が初参戦でした。

ただし、EVクラスはたった2校のみが動的に出場。参戦初年度チームでは、静岡大学「Shizuoka University Motors (SUM)」のみがなんとかフォローアップ走行(シェイクダウン不証明や車検が期限までに間に合わなかったチームの予備走行機会)にこぎつけました。

「EV参戦初年度で全競技完走」という未だ達成チームがない目標を掲げて挑んだSUMでしたが、第2回大会から参戦するチームをもってしても、その壁はとても高いものでした。

22年のチームリーダー、塚本さんにお話を伺いました。

SUM EV の成績

2022年度の車両「SE-122」は、8月16日にシェイクダウンを完了しました。

静的審査は、デザイン25位、コスト27位、プレゼン30位で、静的審査のみでは22位でした。

動的審査に向けては、3日目に技術車検はクリアしたものの、ブレーキ試験を時間内に通過できず。動的出走は断たれ、全競技完走はここで潰えます。

4日目のフォローアップ走行では、走行した唯一のEV車両となりました。ただ、1周目でマシンストップ、リタイアとなりました。

総合成績は39位でした。また、EV部門のルーキー賞を獲得しています。

静岡大学が走行したフォローアップ走行の様子はこちら

設計期間こそが最大の難点か

SUMのEV参戦計画は、2020年の夏休みすぎに決定したそうです。EV班がつくられますが、21年まではICVでも出場していたため、この頃はゆっくりとレギュレーションと部品の理解を進めていったそうです。

ただ、苦難はそこからでした。22年大会に向けて21年末までに回路設計を終わらせると予定を立てますが、これが破綻してしまいます。結局回路製作が6月までかかるなど、当初の予定から大幅に遅れてしまいます。何しろEVの設計は初めてだったので、設計や製作にどの程度の時間がかかるのかが全く分からなかったといいます。

同時にシャシーの製作も遅れてしまったこともあり、シェイクダウンは8月16日でした。この後もシャシー製作は続き、マシンをすべてバラしてさらに溶接作業をして仕上げたそうです。

8月2日に報道記者向け発表会には、製作途中ながらマシンを持ち込んだ(左側)

EVの新規参戦には、まず専門用語を知ることから始まり、これまでと全く勝手が違う電気系パーツの理解もあります。同郷の静岡理工科大学や企業の方に助けを借りてこれを進めていったということですが、話を聴くにEV参戦にはこの部分で相当な苦労がありそうです。

大会を戦うにも、ICVより難しい

大会で戦ううえでも、EVチームは大変そうです。

例えばコスト審査では、通常は昨年データを流用することが可能ですが、EVへコンバートとなるとあらゆるデータが変わるため、多くが新規に作成することになってしまうそうです。また、参考資料もなく、手間がかなり増えてしまうそう。プレゼン審査では、大幅に高価になるマシン費用がネックになるといいます。

逆にデザイン審査では、イチからマシン設計することで、資料がかなり作りやすかったと言います。前年の改善のテーマから脱出できるので、充実した内容となったそうです。

ただ、当然初年度なので、マシンを形作っていくうちに設計変更が生じ、そこをデザイン審査では指摘されたと言います。SUMは「加速」というところに焦点を置いた設計をしていましたが「修正を繰り返しすぎて、予定と違う部分が多くありました。(加速性能がいいマシンだが)それなのにこのホイールベースやトレッドでいいの?となってしまいました」とのこと。

報道記者向け発表会より(修正済み)

大会現地では、車検の突破に苦労したそうです。今大会は12台のEVチームに対して、車検が間に合ったのは2台、フォローアップ走行に間に合ったのはこのSUMのみ。そもそもEV・機械車検を通過したのは計5台のみとなりました。

EVの車検は項目が多くかなりの時間がかかるため、「2~3回しか不通過は許されない」そうです。特に機械車検に対しては「一発通過すべき」だとも言います。今年は車検が初めてとなるメンバーがほとんどだったので、そこが上記のようになってしまった要因といえそうです。

さらに、電気系の製作精度は相当なものが求められそうです。車検時に作動を求められるシステムが動かないと、その時点で落検となります。

「たまたま車検時に動作しなかったり、接触不良で落ちてしまうことがあります。今朝まで動いていたのに、となることもあります。早朝に到着して動作チェックをするなどの対策が必要です」

フォローアップ走行枠に登場したSE-122

SUMは結局、今大会は車検を時間内に通過することはできませんでした。ただ、フォローアップ走行枠には間に合い、この枠の唯一のEVのチームとなりました。この時点でSE-122は校内で数周走った程度。さらにEVにありがちな、セルが設定電圧になってしまうトラブル(俗にいうAMSのエラー)が多発していたそうです。

フォローアップ走行では、1周様子を見て、それ次第で2周目からペースを上げようという戦略でいたそうです。ただ、ドライバーが走り出すといい感触を得たそうで、1周目の後半からペースを上げます。しかし、直後にトラブルが発生。1周を終える前にリタイアとなってしまいました。

リタイア直後、悔し涙があふれた

EV初年度の難関を突破するには

EV参戦とは、知識やマシンをイチから積み上げることになるので、相当な苦労がありそうです。

まとめると「レギュレーションや部品の理解」「イチからの設計となるPU系統」「経験したことがない電気系トラブル」「増大する車検項目への対策」、このあたりが苦労ポイントとなりそうです。

最後に、EV参戦初年のチームにどうアドバイスするかと聴くと、こう話してくれました。

「チーム内のコミュニケーションを密にすることです。マシン製作の計画は余裕をもって作ると思いますが、必ずその通りには行きません。最終的にギリギリになった中で、みんなで話し合って何を優先していくかを決めていけることが大切だと思います。チームのまとまりが試されます」

 

大会後、SE-122のAMSのトラブルは対策し、校内でテストランをしていました。この時にそれなりな速度で走行したそうですが、チームはポテンシャルの高さを感じたそうです。

Shizuoka University Motors はEV2年目を迎え、さらにチーム内でも、マシン設計メンバーの仕組みの見直しが考えられているそうです。1年目完走という目標は失敗に終わりましたが、チームの強さを取り戻すという最終目標については、来年以降大きな期待ができそうです!

静岡大学「Shizuoka University Motors」が出走した大会4日目レポートはこちら

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