第22回学生フォーミュラ日本大会2024が、9月9~14日に開催された。今回より、第4回大会より17年にわたって使用されてきたエコパを離れ、新たにAichi Sky Expo多目的使用地が会場となった。

また、日本大会の特徴である「ICV、EVが同じ土俵で争う」の最後の大会となった。まとめて成績付けする方式から、来年からは他の海外大会と同じようにクラスごとに成績付けする方式となる。「総合優勝」という称号も最後のチャンスだった。

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最後の総合優勝は京都工芸繊維大学の3連覇目に

前述のとおり「最後の総合優勝」となった今大会、勝ち取ったのは京都工芸繊維大学となった。最多記録を更新する6勝目、最多タイ記録の3連覇目となった。ICVクラストップも同じく獲得。

「新4連覇計画」が始まった2022年からの連勝は続いた。今年はフレームをカーボンモノコック化するなど現計画最大の変更を実行し、試走会ではセッティングや熱問題に苦しむ様子を見せたが、最終的にはオートクロスでトップを獲得するパフォーマンスを発揮した。静的審査では海外勢に押されそれぞれで順位を落としはしたが、ライバルの脱落もあり、最終競技エンデュランスでは完走重視のペースメーカーランで勝利を確実なものとした。

最も有力視された名古屋大学EVは総合2位、EVクラス1位となった。「4輪独立モーター+カーボンモノコック」というパッケージの2年目として、最後の総合優勝チャンスにEV初の快挙を達成しに行ったが、ミスが目立った。初日のEV車検から微妙に後れを取ると、後半となった機械車検のタイミングが重なり4日目の出走は午後から、さらにスキッドパッドの出走をドライバー装備ミスにより落とし痛恨のノーポイントとなった。それでもアクセラレーションは敵なしの1位、オートクロスではトラブルさえなければトップの可能性があった走りを披露。本車両パッケージでは初となるエンデュランス完走も達成し、EV史上最高成績となる総合2位を獲得した。

総合3位には神戸大学。得意の静的審査で確実に点数を確保すると、パフォーマンスを上げた車両はアクセラレーションとエンデュランスで3位を獲得し得点を伸ばし、チーム過去最高順位を達成した。

スピード争いには新星

マシンポテンシャルが比較的重視される学生フォーミュラ。

総合的なパフォーマンスを測るオートクロス、そのトップ6は「ファイナル6」と呼ばれる。京都工芸繊維大学は8大会連続、名城大学、日本自動車大学は3大会連続でその地位を獲得。新規勢として、大阪大学が2018年以来の復活、東京農工大学、日本大学理工学部はチーム史上初めての達成となった。9位の立命館大学はコロナ禍以降初の出走でトップ10に名を連ねた。

スキッドパッドでは、トップをJilin University ICV(中国)に奪われたが、2位にチーム初となる5秒切りを達成した岐阜大学が食い込んだ。また4位に同志社大学、5位に大阪工業大学、8位に上智大学EVがジャンプアップしている。

海外勢の脅威が再来

コロナ禍により2021,2022年は海外チームの受け入れを止めていたが、昨年から再開。今年はスケジュールに組み込まれるようになり、海外強豪も参加するようになった。ちなみに日本大会では海外勢が過去2回総合優勝を達成しており、2019年にも総合4位に食い込んでいる。

エントリーには、その2019年に4位となったTongji University ICV(中国)をはじめ、前年の中国大会ICV王者&EV王者、前年タイ大会王者など、上位を狙うチームが多くいた。

今大会は特に中国勢が牙を剥いた。デザイン審査では決勝「デザインファイナル」に進出した4チーム中3チームが中国チームとなった。最終結果もJilin Univ. ICV(中国)が1位を獲得している。プレゼン審査でも、海外チームが2位3位を占めた。

動的審査では、海外勢唯一の全競技完走となったJilin Univ. ICV(中国)がスキッドパッド1位、アクセラ5位を獲得。最終的に同チームは総合12位を獲得した。

久々の来日、また異なるルールへの適合も壁としてあったがこの活躍。経験を得た来年以降のパフォーマンスが恐ろしい。

会場移転、観客には好評、車両にはダメージも

長きにわたって開催された静岡県小笠山総合運動場エコパを離れ、今年から愛知県 セントレア島にあるAichi Sky Expoへと移った。会場変更は2006年のエコパ以来で、オートクロス・エンデュランスのコース変更は2014年以来とみられている。

会場移転に伴い、エコパでは屋外だったチームピットや車検場は屋内ホールになった。9月という残暑がある時期で熱中症が毎年発生していたが、かなり抑えられた。また、来場者も快適な環境で学生らとの交流を図ることができていた。また、大会期間中は常設フードコートも開かれ、これまで欠点となっていた食事問題も大きく改善された。

新コースレイアウトは、学生にとって新たな挑戦となった。動的審査会場となった多目的広場は、排水用の路面起伏やグレーチングが特徴な場所となった。起伏によるエアロデバイスの路面接触は各チーム課題になるとされていたが、焼成データの提供や事前視察会なども開かれ、対策がなされ大きな問題とはならなかった。一方、起伏段差によるジャンプの衝撃で車両破損が起こる事態がいくつか見受けられ、完走に対し新たな課題が発生することとなった。

また、新しくなったコースレイアウトは勢力図に大きな影響を及ぼした。特に関西勢以外は練習走行が満足にできなかった結果、そして起伏により車両姿勢が揺さぶられる要素も追加され、今年に関しては”ドライバーゲーム”という色が濃く出てしまった。オートクロスの上位チームにはレース経験者など車両を走らせることに長けたドライバーを要するチームが並んだ。また、安定性の高いドライバーフレンドリーな車両のほうが上位に行きやすい傾向もあった。

来年は改革の年か

2025年は、まずはICVクラス、EVクラスの成績付けが完全別になる。実質4連覇を狙う京都工芸繊維大学をはじめ、戦略がまた変わってくるはずだ。

また、コロナ禍で経験や技術ロスが起こってから4大会目となる。各チームが完走達成まで回復してきているため、さらなるパフォーマンスアップを図ってくるとみられる。実際、数チームがエンジン変更の兆しを見せていたり、東京都立大学が10インチホイール化を匂わせている。

また海外チームにも注目だ。経験値を得たチームはもちろん、ここ2年で参戦を検討しながら叶っていないチームも多い。さらなる強豪の登場も十分ありうるだろう。