9月13日、5日目を迎えた学生フォーミュラ日本大会2024は、前日にスプリント系の動的審査が終わり、多くのチームが最後の競技を残すのみとなった。

最終競技となるエンデュランス。まず初日は、まずオートクロス結果の下位18台が最終競技の出番を迎えた。その後には動的フォローアップ会。オートクロスでタイムを残せず、もしくは規定タイムを上回れずエンデュランス出走条件を満たせなかったチームの体験走行枠がエンデュランス後に実施された。

一方屋内では、デザイン審査の決勝戦「デザインファイナル」が行われた。驚きを与えた上位3/4が海外チームとなったデザイン審査決勝は、屋内ホールEのステージを前に公開で開催された。

エンデュランス、耐久はやはり鬼門に

朝8時過ぎ、少々遅れてエンデュランスが始まる。

C36 金沢大学

2022,23年の大会は辞退していたため、今大会が2021年の公式記録会(コロナ禍により動的審査の代わりに実施された走行会)以来の車両持ち込みとなった。久々にもかかわらず車検通過を達成し、アクセラとスキパには間に合わなかったがオートクロスには出走でき、エンデュランスの参加権を手にした。

そして久々の出場にもかかわらず、今大会の、そしてAichi Sky Expoでのエンデュランス先頭車両となった。車両は安定した様子で走行を続ける。同時に出走した車両とのペースの違いから2度の追い抜きのための強制停止を受けたり、スピンで一時車両は止まってしまうも再スタートを果たす。

青旗を受けファーストチェッカーは受けられなかったが、最終的には20周の完走を達成することができた。2019年以来5年ぶりのエンデュランス完走を達成した。

C10 ホンダテクニカルカレッジ関東

2022年に10位、23年は11位と高順位を獲得してきて、今年はフレームを大幅刷新、初の一桁順位を狙っていた。

エンデュランスではその成果を走りで見せる。新コースの一つの目安、この日たった2台のみだった1分20秒を切るラップタイムを記録した。毎年素早いドライバー交代作業も健在で、最終的にこの大会、Aichi Sky Expoでの最初のチェッカーフラッグを受けた。

3年連続全競技完走は初、そしてエンデュランス審査結果ではファイナル6勢を押しのける6位を記録し、上々の結果を残した。

C31 ホンダテクニカルカレッジ関西

ホンダ学園 関西の「部活動時代」を象徴する4気筒エンジンの車両、昨年は車検通過ができなかった分、今年が初めての競技参加となった。全競技完走を目標としており、それを賭けた最後の競技に挑んだ。

「マシンストップが怖い」とメンバーがコメントを残す中、最初は慎重な入りをするが2周目以降はスピードを上げていく。

ただ3周目のストレートでマシンは急にストップ。エンジンの再始動が叶わず、最初の赤旗、リタイア車両となった。

C19 早稲田大学

前日のオートクロスでは大行列にのまれ2トライ目を逃した車両が多かったが、早稲田大学もその1台。レース経験者である稲葉氏の出走ができず、3年連続のエンデュランス土曜日出走は叶わなかった。

水温を気にしながらの走行に加え、後半ではフロントウィングの破損が発生する。オレンジボールフラッグを受けピットインをし検査を受け、結果は出走許可が下り走行を再開する。最後にはさらにドライバーとの無線が断絶するトラブルにも見舞われるも、20周の完走を果たすことができた。

全競技、特にエンデュランスの完走は、2019年大会以来5年ぶりの達成となった。

C49 Tongji University ICV(中国)

中国の強豪、2019年には総合4位を達成し、今大会もデザインファイナルに進出している。

ただ前日オートクロスの際に車両から白煙が上がるトラブルが発生しており、エンデュランスは辞退することとなった。

C15 山口東京理科大学

例年安定性が高いマシンを持ち込む。今年のマシンコンセプトは「扱いやすいマシン」だ。

このエンデュランスでもマシンのスムーズさは存分に発揮される。「エンジンがスムーズに吹けて、マシンは癖のない動きをする」と解説からも好評が飛ぶ。ドライバーも冷静で、同時に周回する車両のスピンを冷静に回避し周回数を重ねる。

最終的にエンデュランスを完走、これで3年連続となった。さらに両ドライバーがパイロンタッチもなく、ペナルティなしの走りを見せた。

C25 北九州市立大学

車両コンセプトは「New Possibility」とし、新たに前後ウィングの搭載など、10世代目の車両にして速さを目指すフェーズに突入した。ただ最優先事項にはエンデュランスの完走、近年達成できていない目標に挑む。

第一ドライバーは安定した周回に加えパイロンタッチなしの走りで繋ぐ。第二ドライバーは解説から「アグレッシブな走り」と評される対照的な走りを続け、途中スピンもしてしまう。ただ冷静に正しい位置からコース復帰、パイロンタッチもなかった。

その緻密な走りで最後までマシンを運び、完走。エンデュランスの完走は6年ぶりの達成。さらにノンペナルティのおまけもつけた。

C16 帝京大学

デフロック(LSDなし)の代表格のような車両だったが、今年からLSDを搭載し「メカニカルグリップで曲げる車両」への転換を図った。

エンデュランスは苦しい走りに。序盤からパイロンタッチを多くしてしまう。第2ドライバーでもそれは変わらず、ついには黒旗によりピットストップ、警告を受けるまでに至る。その後は数は減ったがゼロにはできないまま走り続ける。

ただ最終的には完走を達成。エンデュランスは完走した中で下から2番目の結果に。全競技完走は果たしたが、メカニカルグリップ化の初年度は苦労の年となった。

C37 埼玉大学

2017年の参戦開始から一気に順位向上させ10位台をキープしてきたが、昨年6大会目にして初めて大幅ランクダウンを経験した。その反省を生かし、今年は早期シェイクダウンを果たし全競技完走を目指した。

入りは慎重、ただ徐々にペースを上げていき、加えてノンペナルティで前半10周をクリアする。後半は1周目からマシンがストップする展開に、一度エンジンが掛かるも再びストップするなど再スタートは難航。ただ再び走り出すことには成功した。

その後は青旗で追い抜かれたが再始動はスムーズ。最終的に完走を果たした。昨年に動的審査すら走行できなかった雪辱を果たした。

C26 東京都市大学

昨年にコロナ禍後初めての動的出走、エンデュランスの完走を果たした。それを受け今年は全競技完走を目指しつつ、車両のポテンシャルアップを図っていた。ただ車検合格の遅れから、既にアクセラとスキパの出走を逃しての、このエンデュランスとなる。

オートクロスでフロントウィングを破損し外しての出走となる中、さらに厳しい展開が襲う。ASEのハードな路面のうねりが響いたか、2周目に左リアのトーロッドが破損する。そのままリタイアとなってしまった。

C39 大阪公立大学

昨年にチーム初の車検通過(ただし時間外)を果たした。今年はメンバー初のフレーム設計となり、車検通過のスムーズさを求めたものにした。その結果、全体の中でもかなり早い時間ですべての合格をもらい、アクセラとスキパ、オートクロスでタイムを残すいい流れで来ていた。

迎えたエンデュランスでは、序盤にコースアウトをしてしまう。その後も、徐々にペースを下げつつ周回を重ねていく。

そして8周目、ラップタイムが2分台目前となるペースを鑑み、運営判断で強制リタイアとなってしまった。耐久面で不調が見られなかった分、惜しいリタイアで全競技間s脳を逃すこととなった。

C33 大阪工業大学

2021年から単気筒エンジン、10インチホイール化と大幅変更を遂げた。ただその仕様にしてからエンデュランスの完走は果たせていない。変更後の3ヵ年計画の最終年、目標としていた完走に挑んだ。

ただマシンは1周目にいきなりのストップ。ドライバーがすぐに腕でバツ印を出し、その場でリタイアとなった。

E02 名古屋工業大学

EVクラス移行2年目。前年にEV初年度で我慢せざるを得なかったことを多く設計に落とし込み、マシンは大きく改善した。280kgというEVならではの重量を感じさせない走りを見せていたが、オートクロスにてエースドライバーによるアタックが時間切れで叶わず、実力は発揮しきれなかった。

2年連続の全競技完走が懸かるこのエンデュランス。1分20秒台の好タイムを刻み続け、混走する富山大を2度追いつく走りを披露。後半を託されたエースドライバー川合氏は、辛くなる時間帯にもかかわらず1分20秒台前半で周回を続ける。最終ラップにはマシンポテンシャルを見せつけんばかりに1分16秒670、この日の全体ベストラップを記録し、20周を締めた。

これでEV移行という大きな改革を乗り越え2年連続の全競技完走、さらに総合得点ではEV2番手の位置を維持して見せた。

E20 富山大学

今年がEV移行の初年度となるチーム、メキメキと力をつけてきての大きな決断だった。EV化してもチーム力は健在で、大きな壁である車検通過を果たし、全競技完走へはこのエンデュランスを残すのみとなっていた。

事前に20周の想定ランはできておらずバッテリー容量に不安を抱えており、電費に振った出力制御にし出走した。混走する名古屋工大のペースが良く2度のブルーフラッグを受けつつ走行を続ける。ただ1周目をベストラップとしペースは上がらず、5周目に2分20秒を超えるラップタイムを考慮され運営判断で強制リタイアとなった。

EV初年度、大会3週間前のシェイクダウン、にもかかわらずエンデュランスに以外でタイムを残すことができている。悔いは残ったが、上々のファーストイヤーとなった。

E14 日産京都自動車大学校

日産からの貸与モーター(初代リーフと同品)を唯一使用するこのチームは、この出場5大会目にしてついに動的審査でタイムを残す快挙を果たした。さらにここまでの全3動的審査でタイムを残し、全競技完走まで王手につけている状況だった。

エンデュランスの出走は完全に初めて。例年綺麗なこだわりのカラーリングがされたカウルを披露しつつ走行を続ける。ただステアリングの重さがドライバーに負荷を与えていき、後半にはそれが顕著に。スローペースとなった周回走行は一時は2分台のラップを刻んでしまい、そして19周目、ラスト1周を残し運営判断で強制リタイアとなってしまった。

目標である全競技完走は果たせず。ただついに動的審査に足跡を残した大きなステップアップを達成した年となった。

E08 東北大学

2013年から参戦開始しEV一筋、ただ実は全競技完走をしたことが無く、特にエンデュランスでは残り数周の壁をいまだに越えたことが無い。今年は車体を継続使用することでシェイクダウンを驚速の2月25日に終え、そこからひたすらトラブル潰しの走行を続けてきていた。そしてこの大会では2チームのみの機械車検一発通過を遂げ、ここまでのすべての動的審査でタイムを残してきていた。

エンデュランスではこれまでのテストランの成果か、1分40秒前後で不安を見せない安定した走行を続けていく。後半に入ってもそれは変わらず、まずは過去の鬼門だった17周を超えた。最後には、マシンはチェッカーフラッグを受け、20周目のゴールまで運ばれた。

これで参加10大会目(2021年動的なし大会を除く)にして、チーム初の全競技完走を達成、パイロンタッチなしノーペナルティのおまけつきだった。

E11 上智大学

今大会には、京都工芸繊維大と並んで5度の最多総合優勝記録をもって望んでいた古豪だが、2021年のEVクラスへの移行からは苦労の年が続き、今大会が初のEVマシンでの走行を達成した年となった。ただここまでの動的審査すべてでタイムを残しており、EV時代初の全競技完走を懸けてのエンデュランスとなった。

完走に向けて電費を重視し周回を続ける、前半10周はパイロンタッチなしのクリーンな走りで終える。後半も7周目に追い抜きを受けながらも安定した走行が続くが、電費を重視するあまり一時2分を超えるラップタイムを記録し、強制リタイアが見えるペースに。さらに9周目にはブレーキ灯の不灯を指摘されオレンジボールフラッグが掲示される。ただしこれも電費走行によりブレーキを踏まずに走行していたことが理由で、ブレーキライトに問題はなし。

そして無事20周目を迎え、エンデュランスの完走を達成、パイロンタッチなしのノーペナルティだった。これで2019年以来の5年ぶり、EVマシンとしては初の全競技完走を果たした。

C20 トヨタ名古屋自動車大学校

前年に惜しくもエンデュランス中にリタイアとなった、10インチホイール化2年目のチーム。コンセプトを「Refrain」とし、前年のいいところをキチンと残した車両開発で臨んできた。このエンデュランスは早めの時間の出走だったがトラブルにより遅れ、2分のタイム加算ペナルティを受けてのスタートだった。

1分30秒台での走行を安定して続けていく。一部コーナーでインリフトをしながらだが大きなミスやトラブルもなく周回を重ねる。17周目に自己ベストを更新しこのままゴールかと思われたが、なんと最終ラップで突然のスローダウン。メンバーが青ざめる中、燃料系のトラブルだったとのことだが、ドライバーが何とかマシンをゴールまで送り届け、20周を完了した。

これで全競技完走を達成。授業でも部活でもない特殊な形態で活動時間を取りづらい中、10インチホイール化という変更後の初の完走を果たした。

E09 山梨大学

EVクラス移行2年目。この2車両目は昨年得たEVの知見を活かし、「トータルバランス」のコンセプトの元、車両開発を進めてきた。今大会でEVチームとなり初めて動的審査へ出走し、全競技完走まではこのエンデュランスを残すのみとなっている。

この日のエンデュランスの最終出走、しかも単独走行となった。多くの観衆の前で1分40秒前後ここまでの他EVと比べても遜色ないタイムを刻み続ける。そして初のエンデュランスにもかかわらず、トラブルの気配も見せずに周回を重ね続けた。

そして20周を無事に完走。これでチームEV時代初めての全競技完走を果たし、目標達成となった。

動的フォローアップ会、車検通過できなかった惜しまれる車両が続々走行

大会では「フォローアップ」と題して、車検や静的、動的審査の講習や実際に経験をできる時間が設けられることがある。動的審査に関してはこの金曜エンデュランス後の時間に、エンデュランスの出走権が得られなかったチームを対象に5周+5周の走行機会が与えられた。

C04 工学院大学

今大会の最速候補の1台だったが、車検通過が間に合わず。ただ記録した1分13秒788はこの日のベストタイム。ちなみに史上初のフォローアップ走行会の完走チームともなった。

C52 Kasetsart University(タイ)

今年1月に行われたタイ大会の王者。久々の日本大会出場で意気込んでいたが、オートクロスで規定以上のタイムを残せず。エンデュランスの出走権を逃し、ここでの出走となった。

E21 Jilin University EV(中国)

昨年11月の中国大会のEVクラス王者。実は中国大会は日本大会とルール種族が異なり、大会前から懸命に車検対応を進めたが、時間までの通過は果たせなかった。

C44 久留米工業大学

「シンプル&ベーシック」を掲げた3ヵ年計画最終年、ただ昨年に引き続き車検通過が叶わず、このフォローアップで走行、完走している。

E08 ものつくり大学

昨年大会後にEV移行後初の車両シェイクダウンを達成。その車両を小修整して今大会に臨み、アクセラ、スキパに初の出走。オートクロスでも走行はしたが規定タイムを下回り、エンデュランスの出走と得点獲得には至らなかった。

E10 National Cheng Kung University(台湾)

日本大会を前に台湾大会でチーム初の車検通過、ここでは初の動的審査完走を目標としていたが、オートクロスで規定以上のタイムを残せず。このフォローアップ走行に出走した。

C30 新潟大学

昨年はエンジンの問題から出場辞退をしており、2年ぶりの出場。ただ時間内の車検通過は叶わずこのフォローアップでの走行となった。

E11 愛知工業大学

EV移行3年目。昨年大会後に初めて車両シェイクダウンを果たし、今大会でEV化後初の動的審査出走を果たした。アクセラ、スキパの出走しタイムを記録。オートクロスでも出走するが、エンデュランス出走権の規定タイムには届かなかった。

C64 大阪産業大学

2021年以来の出場。今大会に向け新たに車両製作をすることを決めシェイクダウンも期限ギリギリながら果たすことに成功していたが、大会では時間内の車検通過には至らなかった。

C35 近畿大学

「サイドエンジン方式×ターボ」という独特なパッケージに、カウル類にも独自性を出してきた。サイドエンジン方式に転換してからは2年目だが、今回もオートクロスで途中ストップ。エンデュランス出走権を逃している。

C24 金沢工業大学

昨年にコロナ禍の苦境から復活。今年は全面刷新でマシンポテンシャルの向上を目指したが、オートクロスにてエンジントラブルからスローダウン。規定タイムを下回りエンデュランスへは出走できなかった。

C48 静岡工科自動車大学校

昨年にEV化を図るも、今年は一転ICVクラスへと再帰、エンジンも新たにし出場した。車検は2019年以来ということもあり動的審査出走には間に合わず、ただこのフォローアップ走行開始後に最後の車検項目にクリアし、走行が叶った。

最高の設計手法を競うデザインファイナル

Design=設計が意味するように、デザイン審査では「設計においてどれだけ良い過程を辿れたか」を競う。この5日目のデザインファイナルでは、事前審査(オンライン)で選ばれた上位数チームによる公開決勝戦が行われる。

今年は4チームが決勝に上がったが、うち国内チームは名古屋大学(EV)のみ。他はいずれもTongji University(ICV)とJilin University(ICVとEVの両方)と、海外チームが占めた。

翌日に発表された最終結果は、C50 Jilin University ICVが1位を獲得した。名古屋大学は3位に食い込み、日本勢としての意地を見せた。