2023大会

6日目最終日 – 学生フォーミュラ日本大会2023

迎えた最終日。この日はエンデュランス、特に比較的オートクロスのタイムがよかったチームが出走を迎える。

EV、ICV、そしてファイナル6枠も含めてどれもがレベルアップ。総合優勝から上位入賞を最終決定するための走りが繰り広げられた。

エンデュランス、EV優先枠

この日のスタートは「EV優先枠」。EVマシンの多くはこの時間の出走となった。

E03 東京大学 UTFF

前々日のオートクロスから、ついにトルクベクタリングを導入したという。このエンデュランスでも使用していた。ただ、第一目標は「20周の完走」、それに全力だった。

印象的だったのは、動的メンバー(ドライバー交代などを担当するメンバー)とフェンス脇のメンバーで、最も激しい無線交信での議論がなされていたこと。背景には、実際の消費電力がいまいちつかめていないことがあったそう。

サインボードでもタイム指示を出し、80~90秒で走行。念願かなって無事に完走することができた。

E01 静岡理工科大学 SIST Formula

昨年のEV王者。テストランではアクセラレーションの日本記録を更新するなど、大会前からEV旋風到来の最先鋒にいた。ただ大会に入るとマシントラブルが頻発、アクセラ含め実力が出せずにいた。

迎えたエンデュランス。「最低限の目標である完走はしたい」と話していた。

しかし2周目、マシンは無情にもストップしてしまい、そのまま競技を終えることになってしまった。

E07 静岡大学 SUM

「一桁順位」を目標に今大会に挑んでいたSUM。EVも2年目となり、ここまですべての競技でタイムを残してきた。ちなみにフロントウィングは大会直前に急いで完成させたものゆえ、路面干渉によるリタイアを懸念して、動的競技が始まる前に外して走行している。

最初に順に並んだ際には、高電圧回路がオンにならないトラブルが発生していた。すぐに直して戻ってくると、まずは無事に走り出すことができた。思わす歓声とハイタッチが出る。

ドライバー交代の10周を終え、ここでも無事に走り出した。EV2年目にして大幅パフォーマンスアップを図った。惜しくもすべて発揮するには至らなかったが、完走はなるかと思われた。

しかし13周目。無情にもマシンは止まってしまった。EV転向後初のエンデュランス完走は果たせなかった。

エンデュランス グループA

ここからはオートクロス上位のチームに出走順が回ってくる。周回ペースも一気に上がる。

17 同志社大学 DUFP

目標は「上位返り咲き」。静的審査で高順位をきっちり確保し、エンデュランスでもこの2日目の出走に食い込んだ。

それらも加味してか、「完走を重視し、燃料噴射は薄めにしている」と、燃費や冷却に注意した安全にゴールまで運べる走りを最優先しているようだった。

前半10周は75秒前後、後半は、カート経験者によるドライビングで70秒付近、最後はペースを調整し75秒まで落とし、無事に完走を果たした。

リアウィングの文字「DON’T WALK (=赤信号=止まれ追い越すな、を意味する)」も効いたか、青旗追い越しはなかった。

5 日本工業大学 FFNIT

このピンクのチームは、エンデュランスにかける心持が違ったはず。なぜなら「燃費効率ICV1位」を目指していたからだ。昨年はそれを達成し、高順位の一因になっている。

序盤は70秒を切るタイムで走行。車体前後を短くした開発が効いているのか、解説陣にも「速い動きをしている」と褒められる動きで走行していく。

後半は、柔らかいタイヤコンパウンドによりタレが発生し70秒を超えるペース。ただ車両に不安を感じる様子はなく、今年も完走を果たした。

ただし、燃費効率に関してはICV2位(全体5位)の結果となった。

20 神戸大学 FORTEK

19年度の最高成績を目指したFORTEK。アクセラレーションの4位などでここまで勢いを持っている。試走会で多くのマイレージを稼いできたことから、不安そうな様子は少なげ。前位に走っていた同郷の同志社大に声援を送っていたのが印象的だった。

周回ペースは良く、前半は68秒台、後半は66秒台に入れ、ここまでの最速ラップを記録した。

 

昨年は燃料切れで完走を逃したが、今回はギリギリOKだったよう。ドライバーからは走行後「(燃料ポンプが)最後5周くらい空吸いしてた」とコメントしていた。

18 九州工業大学 KIT-Formula

奇しくも、同志社大からここまでカワサキ4気筒エンジンマシンのが混ざる走行が続いた。

九州勢は今年はかなり苦しい。車検通過が今年も2台のみで、一方の北九州市立大はエンデュランス完走ができなかった。単独の試走会で相当走り込んできたこちらには、何としても完走してほしいところだった。

前半は70秒前後で周回していく。大会直前にLSDの調子が悪くなり、ステアバランスが乱れていることが不安要素としてあるそう。

後半は70秒台前半でラップを刻む。怖い瞬間があったのは最終ラップのこと。最初のメインストレートでマシンをウィービング、左右にステアリングを切りマシンを揺らしている様子が見えた。

燃料切れも予想させたが、そのままゴールまでマシンは運ばれた。九州勢唯一の完走となった。

E05 名古屋工業大学 N.I.T. Formula Project

EV1年目にもかかわらずさすがは優勝経験のあるチーム、初年度ながら安定性とスピードを両立させてオートクロス12番手。エンデュランスはこの時間の出走となった。

周回ラップは80~90秒での周回。5周目にフロントウィングが路面接触していることを指摘されオレンジボール旗でピットインとなる場面があったが、問題なしと判断されコースへ復帰する。

チームも不安を抱いており、パッシングされる際の停車を恐れ、ペースアップを必死に訴える場面もあった。

その甲斐あってか、追い越しされることなくフィニッシュ。EV初年度ながら、実力をきっちり残して見せた。

15 帝京大学 TFP

このチームは今年も元気がいい。4気筒、13インチホイール、エアロレスというパッケージながら、昨年よりもオートクロス順位を上げてきた。マシンは大会直前にアンチロールバーが間に合ったが、好感触を得ているとのことだった。

前半は70秒近辺。後半は明確に70秒を切ってきて、ドライバーがノッているのが察せられる。明らかにマシンを「乗り回している」ようだった。とはいえターゲットタイムはもっと上だったそう。

そして不安を見せずに20周を完走。13インチタイヤ勢としてはエンデュランス最高順位となる17位となった。

E04 名古屋大学 FEM

ここで優勝候補の登場だ。スタート前時点では、京都工繊とほぼ同得点とみられており、このエンデュランスですべてが決まることになる。一方で、両者ともにマシンに不具合を抱えていた。

FEMの場合は、電気系な不具合を抱えていた。前々日のオートクロスでは4輪が駆動させられておらず、FR状態でのアタックとなった。このエンデュランスまでには直して4輪駆動での走行を迎えることができたが、懸念点を生んだのは間違いない。

ラップタイムは80秒程度。バッテリー消費量も、燃費も見ながらの慎重な走行をしていく。ちなみに空気抵抗を減らし電費を稼ぐため、リアウィングのフラップを開いている。

しかしドライバー交代時に、左フロントの駆動系からオイル漏れが発覚。走行許可が下りず、この時点で終了を宣告された。

EV初の総合優勝、望みはここで断たれてしまった

51 Prince of Songkhla University – Lookprabida

エンデュランスに到達した海外勢2台のうち、最終日出走になったのはこのチームだけ。マシンメイクのレベルも高い。日本人のチームアドバイザーによると「優勝候補に及び速さはないけど、誰が乗ってもそこそこ速くなるようにできている」と話していた。

またボルテージも高い。スタートやドライバー交代後に走り出すたび、喜びを大きく表現していた。

周回ペースも70秒を切ってくる。最終的には66秒台にまで入れてきた。

20周も無事完走。海外勢唯一の完走を果たした。エンデュランス順位では、ファイナル6勢に次ぐ7位を獲得している。

32 芝浦工業大学 Shiba-4

この出走タイミングは大穴、であったのは間違いない。

昨年は車検通過ならず。今年もシェイクダウンは8月15日と大会2週間前、そしてテスト走行はたった1回、数周のみだった。

そこに、6か月ルール(卒業後6か月後まではチームに所属できる)によりマシンに乗ったドライバーが、乗り始めてすぐに挑んだオートクロスで驚速のタイムをたたき出した。大会中最大のサプライズの一つだろう。そのドライバーは前半10周に搭乗している。

マシン自体はまだ10kmもマイレージを積んでいないよう。エンジン始動時も白煙を噴き上げながらのスタートだった。

しかし、前半は65秒台、後半は76秒に入れるタイムで走行を重ね、20周も完走を果たしている。厳しい状況の中、エンデュランスを久々に走り切ることができた。

2 京都大学 KART

「走り出せば速い」と言われてきたが、今年の状況は混走した芝浦工大と変わらない。テストランできた距離は10kmにも届いていないそうで、走り切れるかは全くわからなかった。

走行ペースは70秒を少し超えるペースで周回。「シームレスミッション」を導入したというが、直線では燃調の整っていなさが若干感じられる。一時スローダウンする様子も見られた。

ピンチは12周目に起こった。11周目の最終コーナーでブレーキロックを起こし、コースアウトした。学Fでは逸脱した場所より手前でコース復帰しなければペナルティとなるため、ドライバーは右に転回して復帰を試みた。しかし万事休す、ステアリング切れ角が足りず、スポンジバリアを前に立ち往生してしまった。学Fマシンにバックギアは基本ついていない。

しかし、エンデュランス経験者だったドライバーは冷静だった。あえてスポンジバリアに突っ込むと、反動でマシンをバックさせた。それにより切しろを得ると、再度右に旋回し、コース復帰を果たした。これにはメンバーも歓喜、奇跡の復帰劇だった。

こうしてコースに戻ると、75秒付近で続け、見事エンデュランスを完走しきった。信頼性のあるマシンメイク、ドライバーの柔軟性、さすがは優勝歴のあるチームだった。

23 早稲田大学 WFP

遅らせて、遅れて、そしてこの時間の出走となった。最初は前日、オートクロス結果に抗議を立て60秒を切ったベストタイムが一転認定されることになり、準じてエンデュランス出走順が最終日に移動した。

出走順は本来ならEV優先枠直後だったが、アクセルのオーバートラベルスイッチ(緊急停止スイッチ)が壊れていることが見つかり、修理のため午前の最後に回ることになった。

前半は77秒付近で周回していく。実はギアに不安を抱えているそうで、冷却などに加えそれも懸念材料だった。

後半につれバックファイアが増えた印象。パワーがなくなった印象も見受けられる。それでも、エースドライバーの運転によって70秒を切るペースで周回していく。

しかし15周目、液体漏れによってオレンジボールフラッグ、ピットインを強いられる。オフィシャルによる確認の結果、復帰を承認できない水漏れが指摘され、ここで競技終了となった。

この日唯一のICVマシンのリタイアとなった。

エンデュランス・ファイナル

エンデュランスの出走順は、基本的にオートクロス順位によって並べられていく。5日目枠からグループB、グループAとなり、最終日12:30からの枠は「エンデュランス・ファイナル」と呼ばれる。

ここの6台は「ファイナル6」と呼ばれ、疑いない速さを備えたマシンが連なる。

 

3 日本自動車大学校 Formula Factory NATS

ファイナル6は2年連続3回目。今年はサイドウィングとハイコンプピストンの導入により、旋回も直線も速さを増してきた。アクセラでは2番手を獲得している。

ただウィング製作により完成が遅れ、走行距離は昨年よりも落としてきている。また、高圧縮エンジンならではのエンジンのかかりづらさも気になるところ。とはいえエンデュランスを想定した20kmの連続走行では、大きな問題は出ていなかったそう。

周回ペースはさすが。レース経験者ドライバーの2人ともに、ここまでのベストを塗り替える64秒台を記録、さらにはそのタイムを安定的に計測し続ける。ベストは63秒台だった。

そのタイムを維持し、20周を完走した。エンデュランス結果は2位につけている。

14 岐阜大学 GFR

ファイナル6は2年連続2回目。急成長したチームは、マシンの速さをさらに向上させてこの大会に臨んでいる。すでに注目の一台に数えられる存在になった。

周回ペースもいい。64秒台を立て続けに記録し、混走するNATSと同じペースで周回を続ける。水温に関しては、大きな不安は持っていな様子だった。

後半は65秒付近。タイヤ持ち数の都合で、オートクロスで卸した新品タイヤを継続して使っているため、若干熱ダレをしているような様子を見せる。

ただ20周は無事完走し、リタイアとなった昨年のリベンジを果たした。エンデュランス結果は3位につけている。

8 名城大学 MRT

ファイナル6は2年連続2回目。単気筒唯一のファイナル6で、問題を抱える中でも速さを発揮した。

4月にもチームマネジメントで問題は起きていたが、最も風向きが変わったのは大会前のエコパ試走会。ハイコンプキットを組んでいたエンジンが、まさかのブローに見舞われたのだった。

大会約2週間前のことで、そこから予備エンジンへと載せ替えを実行。その後走行はできていなく、大会現地に到着している。まったく動かされていなかったエンジンもさることながら、テストできなかった現仕様の燃調や冷却が不安要素になっている。

ラップペースは68、7秒程度。マシンの様子を見るためにも、前半は抑えた走行を続けた。

単気筒ということもあり、上記の問題を合わせて、ドライバー交代の際のエンジン始動はかなりの不安要素だったよう。無事にかかると「ヤマを越えた!」と、大きな歓声を上げた。

後半エースドライバーが乗ると、65秒近辺、ベストは63秒台に入れながら走行。最終的には無事完走を果たすことができた。エンデュランス順位は6位となっている。

4 千葉大学 CUFP

ファイナル6は初めてとなる。昨年はあと少しで逃していた。加速性能で実力を得始めると、22年からはコーナリングのポテンシャルも向上させている。

今大会では、車検、特に騒音検査にかなり苦戦していた。動的初日までかかった影響で、アクセラとスキッドパッドでは満足のいくタイムが残せていない。それでも、オートクロスは3位の結果を残してきた。

エンデュランス一人目のドライバーは初出走ということで、全面バックアップの慎重な走行が続く。無線をつなぎ、「追い越し」という通常外の状況を作らないよう混走している名城大のタイムをとペース指示を毎回伝えていた。その甲斐あって、まずは問題なく前半10周を終える。

ここからはマシンの信頼性、水温などとの闘い。「アタックラップを1周減らして」との指示が飛ぶなど、最後までマシン状態に気を使っている。前半と同じく65秒近辺で走行を続けていく。

そして20周は無事完走。エンデュランス結果は5位となった。

7 工学院大学 KRT

最後の2台となった。KRTは上位チームの仲間入りを目指すとともに、今年の試走会では常に王者・京都工繊をライバル視し続けていた。そして、ここで直接速さ比べの場が用意された。

タイヤはニュータイヤ。前半にエースドライバーが走り、62秒台で走行、周目のアタックではベストタイムはここまでで最速の61秒台に入れてくる。ただし、エンデュランスの最速周回レコードの60.690秒には届かなかった。

後半は63秒台で周回を続ける。これまでホース抜けなどの問題が頻発していたが、この一番では発生させなかった。

しかし事件は最終ラップに起きた。完走がほぼ確実になった20周目の最終コーナーを抜けるが、なんとドライバーは21周目に向かってしまったのだった。これにはだれもが驚愕、順当なラップを続けていて高順位が予想されていただけあって、チームメンバーの顔色が一気に変わった。

その21周目には「ピットへの強制帰還」を示す黒旗が掲出されて、ドライバーはようやく帰還した。

※最終結果としては、21周目のタイムとチェッカーフラッグ無視による2つのタイムペナルティが追加された。結果、エンデュランス4位となっている。

1 京都工芸繊維大学 Grandelfino

2014年以降、ずっとファイナル6入りをしており、今回で7回目を数える。さらに、2年続けてのオートクロス1位で、最終出走となった。

この出走には2つの注目点があった。1つは、エンデュランスの周回レコード記録を更新できるかということだ。2014年からコースレイアウトが固定化され、今年がのエコパラストイヤーで現レイアウトが最後だと言われている。2018年のUAS Grazが出した60.690秒、前述の工学院大とともに、この記録の更新に大きく期待がかかった。

2つ目は、優勝争いのゆくえだ。今年も多くの競技で1位を獲得し優勝争いを展開、さらに唯一匹敵していた名古屋大がエンデュランスリタイアで脱落した。しかしGrandelfinoも、前々日に漏れによりオイルクーラーの緊急交換をしており、その点では信頼性に懸念を抱えていた。もしここで完走ならずとなると、優勝争いは極めて混沌となる。

記録更新の時はすぐやってきた。2周目、工学院大が0.5秒ほど及ばなかったあと、60.584秒を記録、見事レコードタイムを奪取して見せた。その後は62~3秒台で周回を続けていく。

ドライバー交代後も62~3秒台で走行。今のところ問題はなく、ドライバーも楽しそうに周回していく。

かくして20周目。マシンはチェッカーフラッグを受け、無事にゴールまで運ばれた。京都工繊の2連覇がほぼ確定した瞬間だった。

 

この後表彰式が行われたが、いくつか嫌疑ある裁定がなされたことや集計システムの不具合から、総合結果の算出が延期となった。

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