「カースワップ」とは何か?
学生フォーミュラではすべてのマシンの設計思想が、マシンメイクが、一台一台全く異なる。そのためF1と同じく「他チームが何をやっているのか?」が非常に参考になるわけである。それを、F1ではまずできない「乗り比べ」によって、自チームの設計に生かしていこうというのがカースワップ試走会のだいたいの目的である。
大会後最初は関東での開催。コースは大会レイアウトをなるべく盛り込んだミニコース。
残念ながら2日目のみの取材になったが、その中で明らかになった各チームのマシンの特徴をまとめていく。
総合4位 工学院大学Kougakuin Racing Team
マシンコンセプトは「キビキビ、パワフル、だれが乗っても速い」。4気筒エンジン、10インチホイール。特徴的なのは、重量物をなるべく車体中心に置いたパッケージだ。また、この唯一の前後ウィング搭載マシンだった。
- 低回転からのトルクがある
- この日参加マシンの中で一番パワーがある
- 一番ドライバーに対して優しいマシン。動かしたいように動かせる
- リアがとてもしっかりしていて、安定している
一番評判が良かったのは工学院大のマシンだった。それは速さに対するものだけではなく、コンセプトにあるように「乗りやすさ」の評価も最も高かった。特に熟達していないドライバーには優しいようだ。
総合14位 茨城大学 Ibaraki University Racing
海外製の大排気量単気筒エンジン、10インチホイール。解説陣から足の動きの良さを褒められる、有力チームが培ってきた経験が込められている。また、サイドウィングを搭載している。
- リアが滑った時の安定感がある
- 足回りの応答性がよくコントローラブル
- 癖がなくニュートラルで、乗りやすい
- エアシフター(ボタンシフター)で乗りやすい
- 低回転のトルクがあり使いやすい
工学院大に匹敵する高評価を得たのは茨城大だった。こちらも乗りやすさはかなり良く、また低回転からパワーがある単気筒エンジンの良さも見えた。応答性、意のままに操れることへの評価は高いが、リアの安定性に対してはドライバーの好みが分かれた印象。
総合16位 芝浦工業大学Shiba-4
4気筒エンジン、10インチホイール。タイヤサイズも最小レベルにし車体はコンパクト、4気筒ながら205kgを誇る。もともとはエアロをつける予定だったが、断念している。
- エンジンはパワーバンドに入った時のパワーがすごい
- 下からもきちんと吹ける
- ドライバーがちゃんと動かしていく必要があり、比較的玄人向けのマシン
- ステアリングが軽い
- 製作精度など、きれいに作りこまれている
オートクロスで高順位を果たしたマシンであることにだれもが納得していた印象。マシンメイクはキチンとしていて、エンジンパワーもしっかりしているようだ。ただ、速く走らせるにはテクニックがいるマシン、だということに意見が一致していた。
総合18位 帝京大学Teikyo Formula Project
開発方針は「軽量化、低重心化」。この日唯一の13インチホイール装着。4気筒エンジンも相まって、トレンドからは外れる重たいパッケージ。リアはデフロック駆動。
- 低回転からトルクがある / 下のパワーが少ない
- リアに比べてフロントのグリップが高い
- ステアリングが重い
- ブレーキが重くて効かない
- 素直な挙動
- デフロックがすごくいい
動きが素直、というところで大方の感想が一致していた。また、他と違ってリアを滑らせるマシンだったようで、そのあたりは「面白い!」と感じるドライバーもいた。デフロックに関しても使いこなせているようで好感触な意見。ステアリングとブレーキの重さは改善点とみられる。
実際のところどうなの?学Fマシンに乗せていただきました
さて、なんと工学院大学チームと帝京大学チームのご厚意で、私編集長もマシンを運転させていただくことができた(ただし工学院大については不調だったため叶わず)。装備一式もお借りして、いざTFP-23に乗車!
学生フォーミュラマシンの運転自体初めてなので「学Fマシン」というところの感想も含めると、とにかく速い。「レンタルカートに大きいエンジンを乗せた感じ」という話を聞いたことがあったが、まさしくフィーリングそのままだった。アクセル全開時は、友人のインプレッサに横の利した時を思い出す加速だった。
確かにTFP-23はステアリングが重たく、ブレーキも難しかった。ただその中でもフロントの安心感だったり、デフロックによるトラクションの掛かりの良さは感じられた。
学生フォーミュラの大コンセプトが「サンデーレーサー向けのマシン」ということだけあり、ボディサイズからも運転しやすいマシンだなということが分かった。できるところならもっと走らせて、速さを極めてみたく思った。
重ね重ね、実際に乗せていただけた帝京大学チーム、そして申し出ていただいた工学院大学チームには感謝申し上げます。