学生フォーミュラ日本大会2023、5日目はエンデュランスとフォローアップ走行が行われた。
最終競技、耐久性を試す競技。これまで走行を積んできたチームでも、予想外に足をすくわれることが多かった。
エンデュランス1日目
ついに始まった最終競技、エンデュランス。この日は13台が出走した。
#9 茨城大学 IUR
この日の先頭走者は茨城大。満足に走行時間を取れなかったことがあってか、比較的速いチームが集まる最終日出走を逃した。
ペースは70秒前後で周回していく。
気になるのはドライバー交代。シェイクダウン以降ずっとエンジン始動に苦しんできており、また単気筒エンジンということもあり、エンジンは無事にかかるかということが気がかりだった。
ただ、「掛けるときのノウハウはつかめてきた」と、一発始動させて戻っていった。
20周は無事完走。エンデュランス14番手となった。
#10 ホンダテクニカルカレッジ関東 H-TEC Formula Project
カラーリングに定評のあるこのチーム。単気筒エンジンパッケージの軽さを生かし、70秒前後のタームで周回を続けた。
チームの特徴として「最速のドライバーチェンジ」と気刺したそうで、確かにエコパ試走会では特に多くドライバー交代の練習を行っていた。
タイムゲインとはならないものの、先に作業に入った茨城大よりも速く作業を完了。その後に無事20周を走り切り、エンデュランス競技最初のチェッカーを受けた。
また、燃費審査では、ICVトップとなる全体2番手を獲得している。
#27 北海道大学 FHT
昨年は冷却性能が足りずに完走ならず。今年は冷却系を改良し、事前に想定の20kmのテストも行い、この最終競技に臨んできた。
それでも不安はあったようだが、出走タイミングは朝方、「昼なら怖かった」とも話していた。実際、ドライバー交代後の地面には冷却水のシミが見えた。
それでも73秒弱のペースで20周を無事完走。3Dプリンターで作られた力作のステアリングを握り、今年最も話題になったカラーリングの車両は、全競技完走を果たした。
#26 東京都立大学 Formula TMU
コンセプト「力動」を掲げた今大会。昨年は車両に難があり2速ホールドでの走行だったが、今年は力いっぱい走りたいという思いを込めていた。
ただ今年も問題が襲った。排気系のぬけの悪さを考慮して使うことを予定としていた1速ギアだが、そこにシフトが入らない問題が発生。2足より上を使用しての走行になった。
ただ、追い越し・追い抜きがありつつも、全体を71~80秒程度のペースで終え、完走しきることができた。
#13 山口東京理科大学 SOCU Formula
今年もカラーリングを仕上げてきた。車体の方はシェイクダウンが遅くなったことから、セッティングや燃調についてうまく合わせてこられていなかった。
それでも軽量化や応答性向上の成果か、軽やかな動きを見せ、前半70~75秒台、後半は60秒台に入れてくるペースで完走しきった。
#24 トヨタ名古屋自動車大学校 TTCN-F23
この日、エンデュランスの未完走率は6割近くになったが、その最初となったのがこのチームだった。
今季は「4低」というコンセプトで、低重量、低重心、低リスク、低ストレスをテーマに車両づくりをした。特に大きな変化として、10インチホイール化をしている。
ただ、ドライバー交代後にエンジン始動ができなかった。セルを回した際に初爆の音がなかったことから、燃料系の問題と思われる。
#16 日本大学理工学部 Engin Association
「日大混走」が実現した。エンデュランスの出走順では隣り合っていて、他チームが出走順変更の申請をしたことから、巡り合うことになった。ただ、両者とも問題を抱えており、出走前の顔色は芳しくない。
先に出た理工学部(船橋キャンパス)は、エンジンが1気筒点火していない状態。パワーの出は良くはなかった。
70秒台でラップを続けるも、ドライバー交代後にストップ。完走は果たせなかった。
#30 日本大学生産工学部CIT-Racing
生産工学部(津田沼キャンパス)はテスト時から燃料ポンプの安定し作動ができていなかった。エンジンがかからない、ただ時には走ることができる、使用する社外部品のクセに苦しんでいた。
一番の懸念点はドライバー交代後のエンジン始動だと話していた。スタート時はストールさせないように大きくふかしながらの発進。
問題は10周より前に起きた。2周目、3周目でそれぞれストールを起こし、3周目の時に直後再ストップ。ここで競技を終えることになった。
#56 Universitas Sebelas Maret
インドネシアのチーム。ちなみに、動的競技出場を果たした海外チームはここともう一つだけだ。
20周のテストはしてきたそうだが、少し現地の気温よりも高いそうで、冷却関係については心配をしていた。
90秒程度で周回していたが、6周目あたりからエンジンに不安な音が混じっているようだった。またドライバー交代中には、オイルが終えるようなにおいもしていた。
そして14周目。ストレートを抜けた後でマシンストップ。そのまま走行を終えてしまった。後で確認すると、クラッチワイヤーが完全に切れてしまったことによるものだと分かった。
#40 金沢工業大学 FMC
4年ぶりのシェイクダウンを果たし、久しぶりの大会参加となった。シェイクダウンもエコパ試走会の直前だったにも関わらず。なんと車検を全て通過してエンデュランスのスタート地点に立った。
車両名は「RS23」。ReStartの頭文字をとり、心機一転ゼロからのスタートと、今年の意気込みを表現している。
エンデュランス完走にかける思いは強かった。常にドライバーと無線交信を続け、コースアウトがあれば「普通に走って!」、ペースが1分20秒を切ると「20秒台で走って!」と、とにかくリスクを取らない走行をしていた。
ステアリングが重くドライバーはマシンと格闘しながらも、4年ぶりにできたマシンはトラブルを見せずに完走しきった。
#33 東京都市大学 Mi-Tech Racing
こちらも久々の出走を迎えたチームだ。19年大会ではオートクロス7位まで上り詰めるも、コロナ禍の制限に苦しみ、昨年は動的競技の出走ができていなかった。
走行を始めて3周目、ブレーキランプが消えない問題が判明し、オレンジボールでピットインを余儀なくされる。チェックをされるが、問題なしということで再度走行開始となった。
このマシンもステアリングの重さがあるようで、周を追うごとにラップタイムを下げていく。それでも、マシンを運びきることができた。
ただし、オレンジボール時のピットインによるサインボードかドライバーの勘違いか、19周で走行を終えてしまい、完走扱いとなったものの燃費効率の得点はついていない
#6 富山大学 TUF
昨年に初ファイナル6を果たしたチームだが、今年はタイムを落とし、オートクロスで20番手に沈んでしまった。総合10位以内に向けエンデュランスで挽回できるか。
序盤は70秒前後のタイムで周回、ドライバーは気合の入った走りを見せていた。ドライバー交代後はさらに上がり、毎周60秒台に入れてくる。
冷却関係にはかなり不安を持っている様子で、スタート前にはラジエーター前のストーンガードあで外していたという。それがあってか、だんだんとペースを落とした走りになっていく。
14周目、メンバーの見守る動的エリア前に姿を見せた時には、既に力のない走行になっていた。マシンを止め終了。燃料ポンプの電気系トラブルだったとみられている。
#37 北九州市立大学 KF-Works
10年目を迎えるチーム。長年参戦しているわけで、そろそろ下位に沈んだままではいられないという覚悟を持って臨んでいた。
実は前日にフロントブレーキが戻らないトラブルに見舞われており、それを直して再車検してのこの日だった。
77秒前後のペースで周回を進めていく。ただし早くも3周目、マシンは急にストップ。フロントブレーキのロックが再発したようで、リタイアとなってしまった。
#12 東京農工大学 TUAT Formula
大会前から注目されていたチームだったが、この大会ではエンジントラブルにより実力を出せていない。オートクロスでは最後方の位置で、エンデュランス出走も1日目午後という時間となった。
最終競技を迎えてもエンジントラブルの原因はつかめておらず、チームの雰囲気からも不安しかない様子だった。
かくしてスタートしたが、力ないスタートしコーナーを2つほど抜けたところでストップ。今季にマシンポテンシャルをかなり向上させてきたが、それを見せることは叶わなかった。
#39 岡山大学 OUFP
エンデュランス最終出走はこのチーム。車検をかなりスムーズに通過し、久々の全競技完走を目指し最後の競技を迎えた。
メンバーはかなり不安げな様子。エンデュランスを想定した走行はできていないとのことで、無事走り切れるかがやはり気がかりそうだった。
80秒を切るペースで周回をしていくが、9周目にマシンストップ。最終番手で単独走行となった緑のチームは、ここで終了となってしまった。
この日、エンデュランス出走14台に対し完走は6台。率にして43%となった。
フォローアップ走行枠
この後、15時半から「フォローアップ走行枠が設けられた。オートクロスでタイムを残せずエンデュランス出走権を失ったチームのために、走行機会が設けられた。ドライバー交代ありの5周+5周の走行となる。
#E10 豊橋技術科学大学 TUT Formula
コンセプトは「低伸弾道」。日本大会で最も低くまとまったマシンで実力もあったが、車検通過をすることはできなかった。
「来年のために」と新入生2人をドライバーとして走らせようとしていた。5周走行後、ドライバー交代に時間がかかり、そこで終了している。
#E09 日産京都自動車大学校
唯一ニッサンの供給品モータを使用するチーム。試走会時からトラブルで十分に走行できておらず、オートクロスではスタート直後にマシンストップ。タイムが残らなかった。
この走行では無事走りだしたが、3周目のストレート直後にマシンストップ。奇しくもオートクロスの時と同じような位置でトラブルが発生した。
#38 近畿大学KFP
マシンは打って変わり、「サイドエンジン」レイアウトを作り上げてきた。メンバーも驚く進行スピードで来れたが、オートクロスまでには難関の車検通過が間に合わなかった。
ただ、このフォローアップ走行には間に合わせてきて、大改造の初年度からマシンは大会コースを走行した。結果は2周目から止まりつつの走行になり、直後に完全にストップしてしまっている。
#47 大阪公立大学 中百舌鳥レーシング
ついに走るまでにマシンが完成し、3年ぶりにマシンの走行が叶っている。オートクロス終了の3分前に車検を全て通過し、証明シールを貼る暇もないまま動的エリアに駆け込んできたが、長蛇の待機列に阻まれタイムを残すことができなかった。
このフォローアップ走行では、エンジンのトルクが少ないのか、ギアを間違えているのか、ふかしてもエンストが起こってしまいなかなか進まない様子。結果、最初のストレートに進めず、終了となってしまった。
#28 ホンダテクニカルカレッジ関西
今年が授業から部活動へと形態変化した2年目。散々苦しめられたという単気筒から、4気筒エンジンへ変更してきた。過去にも4気筒車両はあったそうで、そこからノウハウや部品を流用していた。
オートクロスはタイムは残っているが、「ICVではICV最速タイムより133%以内ンタイム出ないとエンデュランス出走はできない」というルールから、出走リストからはじかれている。
その要因でもあるのか、燃料系にトラブルがある様子。エンジンはうまく吹けておらず、1周目の最も奥のエリアでマシンストップしてしまっている。
#22 大阪大学 OFRAC
2年連続、エンデュランスには不出走となった。昨年は車検不通過。今年は、オートクロス中にフロントウィングの路面接触を指摘され、取り外すとともに再車検、記録したタイムも抹消され、赤旗続出の影響で再度の走行が間に合わなかった。
「こんなところにいるチームではない」と実況解説で話される内容を証明するように、65秒台のタイムを記録しつつ周回した。5周終了後、ドライバー交代が時間切れで、そこで終了している。
#29 東京理科大学 TSUFR
コロナ禍からの立て直し、「基盤」をコンセプトに置いたが、今年も競技出走は叶わなかった。搭載予定だったであろうフロントウィングも、つけての車検通過とはなっていない。
完全に初めての周回走行。走り出して2周目にマシンストップとなってしまっている。
#E12 東北大学 TUFT
7月下旬の試走会での衝撃的な車体ブロー。そこから見事に復活してきた。競技での走行は間に合わなかったが、このフォローアップには間に合わせてきた。
チーム自体が底まで落ちてからのプロジェクトスタート、マシンの大トラブルも直して臨んだこの走行、走る姿を見てチームリーダーは涙していた。
2周目にマシンストップとなってしまったが、チームの雰囲気は明るかった。
#19 久留米工業大学 フォーミュラプロジェクト
昨年よりも走行時間を落としてしまったそう。長年あり続けたターボを使わないエンジンを選択して、昨年はなんとかなったものの、排気系を刷新して燃調に一気に苦しむようになってしまったよう。
1周目にマシンストップしたり、加速時もエンジンが苦しそうな様子を見せていた。初めて10周を走り切るマシンが出るかと思われた9周目、残念ながらマシンストップしてしまっている。
#44 明星大学 STAR2023
国内唯一のモノショック(前後それぞれでシングルサスペンション)の構造をとり、ラジエーターもエンジン上部という変わった位置に置いている。
フォローアップ直前にブレーキテストを通過して、間に合わせることができていた。だが、2周目に少し白煙を見せながら、ストップしている。
#E02 山梨大学YFR
フォローアップの最後は山梨大。こちらもブレーキテストを直前で通し、最初に並んだときはブレーキオイル漏れを指摘されたが、乗り越えて走行列についている。
東京大、名古屋大と並んでEV参戦初年度で、驚異的な速さでマシンを完成させてきたが、さすがに12か月では足りなかったよう。このフォローアップでも、2周目にマシンストップしている。
翌日には最終日、エンデュランスの2日目が控えている。この日よりも速いマシンが並び、さらにハイペースな戦いが繰り広げられる。