8月2日、「第20回学生フォーミュラ日本大会2022 報道記者向け発表会」が開かれ、今大会の概要が発表された。
この発表会には大会概要の発表と、静岡大学、静岡理工科大学、(以下オンライン)大阪大学、名古屋工業大学、京都工芸繊維大学、東京大学、九州工業大学、日本大学理工学部が参加し、それぞれが今年のマシンを紹介した。
前記事の大会概要の説明のあと、続いてこの8チームによるマシンの紹介が行われた。
静岡大学
静岡大学「SUM(Shizuoka University Motors)」は、今年からEVクラスへの転向をしている。
カーボンモノコックの導入やミッドシップ(サイドエンジン)化など、SUMは歴代で奇抜なパッケージを導入してきたが、それぞれ完走は果たせるものの順位は上がらないままという低迷期を迎えているそう。
昨年度は総合順位一桁を目標にやってきたが、静的審査のみの開催の中、総合順位は30位にとどまった。
そこで、2020年ころから画策されていたEVへの移行を行ったという。
移行の目的は、マシンの潜在能力の向上だという。EVの方が加速性のは間違いなくあり、設計の自由度、例えばヨーコントロールなどの導入も可能である。こうして低迷期を脱出しようとしている。
今年度の目標は「車検通過、全種目完走」。とりあえず高望みはせず、今後の基盤をつくっていくそう。
ちなみに、EVでの初大会で全種目完走を果たした学校は過去にないという。初の偉業を成し遂げられる確実なマシンを作れるか、注目だ。
静岡理工科大学
続いて、日本一大会会場に近い静岡理工科大学のマシン紹介。
16年目を迎えたこのチームは、これまでICVとEVクラスの2台体制で参加していたが、前年度からEVクラスのみの1台体制で参加している。
ちなみに、日本初のEV車両製作をしたチームであり、過去にはEVクラス3連覇を成し遂げている。
今年のマシン、コンセプトは「ハヤブサ」。3つの意味があり、加速性能、運動性能、信頼性を兼ね備えた車両を目指し、設計を行っているという。
マシンに使われているモーターは、スロベニアから取り寄せたものだという。小型・軽量ながら高出力を兼ね備えた、優れたモータだという。
また、コンセプトを踏まえマシンの軽量化の重きを置いているという。特にフレームはEVだと重くなりやすいが、形状を見直し、結果車両重量は250kgの抑えられている。
チームの目標は「歴代最高順位である8位を超える」こと。今年のマシンの感触は悪くなさそうだったので、ぜひ期待したい。
大阪大学
18年大会の勝者、昨年大会では2位だった大阪大学「OFRAC」。強豪校だが、今年のマシン製作には苦労しているようだ。
発表はプロジェクトリーダーの鈴木さんだ。
かねがね噂にはなっていたが、今年のマシンはフロント部をモノコックにしているという。
だが、マシンはまだ完成していないという。それでも、この苦難を乗り越えた時には必ず成長できると信じ、意欲的に活動を続けている。
今年も注目校であることは間違いない。
名古屋工業大学
前回の現地開催、19年大会の覇者、名古屋工業大学だ。
部室の、マシンの中から紹介を行った。
コンセプトは「3つのF Fast(速さ)・Familiar(親和性)・Future(将来性)」だという。
このチームは、来年からEVクラスへのコンバートが決定している。それを見越し、ホイールを大径化しているようだ。
さらに、低ドラッグ・高ダウンフォースを目指し、グランドエフェクトを多く使っている。また、エンジン排気量を479ccにボアアップしたり、サージタンクをCFRPにするなど、パワー関連にも抜かりはない。
目標としては、静的審査で600点(675点中)を目指しているそう。ICVクラスでの最終年に向け、気合が高い。
京都工芸繊維大学
京都工芸繊維大学も部室から、プロジェクトリーダーの吉田さんによる発表だ。
今年はマシンの旋回性能を上げるべく、特に軽量化を重視したという。
具体的には、サスペンションロッドをカーボン製に変えたとのこと。まだ移行中ですべてではないが、荷重がかかりにくいところをまず変更したそう。
また、重心の高さにもこだわり、エンジン搭載位置を下げるようにしたという。そのために、ヤマハMT-07使用校では珍しく、オイルパンを自作している。
その他、エンジンの仕様を自作したり、ウィングの傾きを変えられるように工夫してあったりと、性能向上に余念がなさそうだ。
東京大学
独自の発想をし、勝利を目指している東京大学。今年は創部20周年に当たるという。
今年は、昨年からの正常進化のマシンだという。
特徴的なサイドエンジンは、「Easy to Drive」のコンセプトに基づき、CVTを採用するためだという。CVTを用いるためにスクーターのエンジンを選択しているが、これが縦長で、後部に置くとホイールベースが縦長になってしまうため、ドライバー横に搭載しているのだと説明した。
このCVTの制御にはこだわっており、初心者でも上級者のような変速ができるようになっているそう。
また、リアサスペンションにド・ディオン式アクスルを採用している。これは会場のエコパの敷地が平坦で、この形式のデメリットよりもメリットが大きくなるためだという
このように、独自性を存分に含んだマシンで、今年も優勝を目指していく。
九州工業大学
今回の最遠隔地からの参加となった、九州工業大学だ。
2004年から参加を続け、18回目の参加となる。
今年のマシンの変更点は、サージタンクをアルミから3Dプリンタ製にしたということ、排気をヘルムブーツ型(通信が悪く、間違っているかもしれない)にしたこと、サスペンションにEDFC(自動減衰調整)を導入したことを挙げていた。
現在は走行に勤しんでいるという。総合順位一桁を目標に、調整を続けている。
日本大学理工学部
最も会場のウケが良かったのは、トリを飾った日本大学理工学部のマシン紹介だった。
「円陣会」は参戦20周年、創部70周年を迎える。ちなみに70年前と言えば、同大学生産工学部の前身はできた年で、この部活と生産工学部は同い年なのだという。
マシンは前年の者をブラッシュアップしてきたもの。特徴として、「4気筒の大きなエンジン」を積んでおり、低いサウンドでパワーのあるマシンになっているそうだ。また、今年は燃調を整えることに成功しているという。
今年は総合20位以内を目標に、マシン製作を進めている。発表からは、勢いのある感じが見られた。会場のモニターが小さく、紙に書いてある文字は見えなかったが。
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大会の現地開催が決まり、いよいよ盛り上がってきた学生フォーミュラ。一ヶ月後の勝者はどの学校になるのか、いまから楽しみである。