(2026年4月1日更新)

このページでは、学生フォーミュラの審査(競技)を解説していきます。

3種類の静的審査と、5種類の動的審査(走行競技)があります。8審査を合算し、総合優勝を争います(満点:1000点)。

審査の細かいルールは世界共通ルールブック、もしくは日本大会のローカルルールをご覧ください。(公式サイト:ルールのページ

静的審査(計325点)

静的審査は、マシンの走行を伴わない審査です。生産管理、プレゼンテーション能力、設計のうまさ、の3面から審査を行います。

  • コスト審査(100点)

コスト審査は、「マシン製造にかかる費用(40点)」「算出した費用や図面の正確性(40点)」「製造上の問題が発生した際の対応方法(20点)」の3項目を評価します。

「マシン製造にかかる費用」「算出した費用や図面の正確性」は、事前提出するコストレポートから採点します。これは、マシンの部品図、組立図、そして部品一覧のような書類です。「マシン製造にかかる費用(Price Score)」は、記載されている製作費用を見て、安いほうが得点が高くなります、速さのために高価な部品を使うとここでしっぺ返しを食らいます。「算出した費用や図面の正確性(Discussion Score)」では、提出図面に対し実車との違い、また工程記述や金額計算に違いがないかを減点式で審査されます。正確な記載、見やすい図面が求められます。

「製造上の問題が発生した際の対応方法(Realcase Scinario)」は、事前に公開される”仮の製造上の問題”に対し大会現地でそのアンサーを行う審査です。より良い解決策が提示できれば、高得点を獲得できます。

 

  • プレゼンテーション審査(75点)

プレゼン審査では、チームのプレゼンテーションの作成から発表技能までの能力を審査します。

審査には、自身のマシンを売り出すセールス計画を売り込むと仮定して、審査員を出資先の会社役員などに見立て、行われます。審査自体は大会現地で行われます。10分間与えられた時間でチームは販売計画を発表をし、その後審査員からの質問を受け、審査は終了します。

発表技能も見られますが、黒字時期目標など販売計画の内容、そして質問回答の様子も審査対象です。また、時代背景に沿って環境配慮やSDGsを組み込むことも求められます。

マシンの性能には全く関わらない唯一の審査なため、後回しにされがちだったりします。しかし僅差となる優勝争いではないがしろにできない、そんな立ち位置の審査です。

 

  • デザイン審査(150点)

デザイン審査は、文字通りマシン設計上について評価する審査です。設計の妥当さ、斬新さ、工夫性などを評価します。マシンの優良さ、速さにもつながってくるため、静的審査の中で最も重視される項目です。

事前提出資料(デザインブリーフィング)を基に、大会現地でマシンを前に発表、質疑応答でディスカッションをし、審査は進んでいきます。ちなみに、デザインブリーフィングはすべて英語で記載しなければなりません。

各クラスのデザイン審査の上位数チームは、大会5日目午後に行われる「デザインファイナル」という公開決勝に臨みます。上位チームが公開で設計思想を片す機会なため、多くの学びにつながります。

車検

動的審査へ行く前に、車検という壁を越える必要があります。マシンがルールに則ったものであるかをチェックされます。車検には多くの項目があります。

ICVクラス:機械車検→ドライバーフラッグテスト・脱出テスト→重量測定→チルト試験→騒音試験→ブレーキ試験

EVクラス:EV車検→機械車検→ドライバーフラッグテスト・脱出テスト→重量測定→チルト試験→レインテスト→ブレーキ試験

これらすべてをクリアして、初めて動的審査への参加が認められます。

車検通過を示すため、マシン先端にこのようなシールが貼られる。下半分の4枚が、該当車検をパスするたびに張られていく。

 

EV車検、機械車検は、車検員とともに車両の各部をチェックします。説明が必要な箇所は口頭だったり図で説明し、パーツを外す必要がある場合は外し、ルールに適合しているかの確認を受けます。一枠当たりの車検時間は限られており、スムーズに説明できるよう事前準備を綿密にする必要があります。

車検に入場できるメンバー数は制限がある。パーツ担当ごとに入れ代わり立ち代わり車検員に説明を行う。

チルト試験は、ある程度傾いた場合でもマシンがひっくり返らないことや、オイルや燃料など液体系の漏れがないことをチェックします。チルトテーブルと呼ばれる台に乗せ傾ける姿はちょっと面白いですが、乗っているドライバーにとっては恐怖らしいです。

最大60度傾斜させる。重心が高いとタイヤが浮いてしまい、落検もしばしば。

 

(ICVのみ)騒音試験は、排気マフラーの近くで音を拾い、規定音量に収まっているかをチェックします。アイドリング回転数で103デシベル(地下鉄構内くらい)、ピークパワー回転数で110デシベル(自動車のクラクションくらい)が規定音量です。

測定はC特性。排気系内部の対策も必要だが、部品の振動、音の反響などが影響することも。

(EVのみ)レインテストは、マシンの上から雨のように水を降らせ、漏電が起こらないことをチェックします。2分間水をかけ、その後2分待機し、最後までIMD(絶縁監視システム)が反応しなければ合格です。

バッテリ電圧は400V以上。漏電したら大変!

ブレーキ試験は、ブレーキが4輪すべてでロックが起こるまで効くことを確認します。ある程度の速度まで加速しフルブレーキ、その時に4輪すべてのタイヤがロックしていれば合格です。これの突破に苦労するチームは多く、少しでもブレーキバランスがおかしかったり利きが弱いと合格できません。

4輪それぞれに試験員がつく。ごまかしは効かない。

動的審査(計675点)

車検に通過すると、大会後半から行われる5種の動的審査=走行競技に進みます。

  • アクセラレーション(100点)

75mの直線をエンジン全開、モーター全開で走りぬき、そのタイムを競います。マシンの加速性能が試されます。1チーム当たり、2ドライバーそれぞれ2回、計4回のアタックができます。

もちろんパワー、トラクションに優れるマシンが有利になります。結果、全体で見ればEVクラスの四駆マシンがブッチギリのタイムを記録します。ICVクラスでは4気筒エンジンや排気量が多いエンジンが有利ですが、チューニングやシフトロス次第で上の順位を狙うことができます。

2025年大会 アクセラレーションの全体結果 チーム タイム
1位 名古屋大学(四駆EV) 3.706 秒
2位 Jilin University (四駆EV、中国) 3.800 秒
3位 千葉大学(4気筒エンジン、エアシフターなど) 3.967 秒
4位 九州工業大学(4気筒エンジン、エアシフターなど) 4.036 秒
5位 日本自動車大学校(ハイコンプチューン、エアシフター、エアロレスなど) 4.100 秒
  • スキッドパッド(75点)

8の字に作られたコースで、マシンの旋回性能を競う競技です。略して「スキパ、スキッパ」。1チーム当たり、2ドライバーそれぞれ2回、計4回のアタックができます。

コースは下のように直径15.25mの円が8の字状に並びます、走路幅は3mです。真ん中の直線から入り、まずは右円を2周、そして左円を2周します。

左右円走行のそれぞれ2周目に計測が行われ、その平均値が記録となります(速報では左右合算表記になるときもある)。もしコース枠のコーンに当たってしまった場合、ペナルティとして1個ごとに0.125秒が記録に加算されます。

学生フォーミュラ世界共通ルールブック「FSAE_Rules_2023_V2.pdf」より

上位に入るためには5秒前半、トップを争うには5秒を切れるかどうかが勝負になります。

2025年大会 スキッドパッドの全体結果 チーム タイム
1位 Kasetsart University(ICV、タイ) 4.869 秒
2位 Jilin University(ICV、中国) 4.877 秒
3位 同志社大学(ICV) 4.948 秒
4位 岐阜大学(ICV) 4.966 秒
5位 Jilin University(EV、中国) 4.986 秒

 

  • オートクロス(125点)

ツイスティなコースをタイムアタックし、ラップタイムを競います(サイドターンのないジムカーナ、とよく言われます)。1チーム当たり、2ドライバーそれぞれ2回、計4回のアタックができます。

直線、スラローム、シケイン、低速コーナーなどあらゆる要素が含まれていて、マシンの総合性能が問われます。

この審査がその年の事実上の最速マシンが決まる競技となります。チームのプライドに懸けて最速タイムを出すため、チームは最もコンディションが整うタイミングでエースドライバーの出走を狙います(路面のチリが掃かれ、ラバーが乗り、タイヤが発動しやすい午後枠の最終版など)。

2024年からAichi Sky Expoに変わり、コースレイアウトも変わりました。以前から比べるとより直線要素が減り、低速コーナーが増え、路面の段差も考えなければいけないコースとなりました。

2025年には、史上初めてEVクラスのマシンが全体トップタイムを記録し、日本大会でもついにEV/ICVのターンオーバーが発生しました。今後、EVマシンがこの競技では差を広げていくものだと思われます。

2025年大会 オートクロスの全体結果 チーム タイム
1位 名古屋工業大学(EV) 63.746 秒
2位 名古屋大学(EV) 63.982 秒
3位 北海道大学(ICV) 64.808 秒
4位 Jilin University (EV、中国) 64.924 秒
5位 工学院大学(ICV) 64.979 秒
6位 大阪大学(ICV) 65.179 秒
過去、上位6チームはそのまま「エンデュランスファイナル」枠での出走となることから、「ファイナル6」と呼ばれる名誉な存在となりました。2025年からはICV/EVクラスの兼ね合いから、ファイナル6は形骸化しています。

このオートクロスのタイムは、この後のエンデュランスの出場権が得られるかどうかも左右します。全体トップタイムから規定以上遅いタイム(1.45倍など)だと、エンデュランスに出場することはできません。

  • エンデュランス(275点)

先ほどのオートクロスのコースを1周つなげたようなコースで(下画像、左上がスタート/ゴール)、2人のドライバーで10周ずつ、計20周走行する競技です。灼熱の中、もしくは雨の中でも走行しマシンの耐久性能を試しつつ、20周の合計ラップタイムの少なさを競います。合計距離は約20kmです。

第一には「完走すること」。はたから見ているより20周の耐久走行は過酷。部品の耐久性、燃費・電費、熱問題やパイロンへの接触による破損回避、そして難しいコースを失格にならないよう走り切るドライバーの腕や集中力、体力も必要になってきます。この完走を達成してこそ、1年間の必死の努力が報われます。

第二には「大得点を奪取すること」。エンデュランスは275点満点(/総得点1000点中)で、全8種目で最も大きな得点分布を占めます。もし上位を狙う場合、この競技での順位は非常に重要です。完走できなくても大きなロスになりますが、ラップタイムを削って上位を狙うことは、総合順位を大きく左右します。

 

 

競技手順です。第一ドライバーがまず出走し、10周走り切るとピットインします。そこでドライバー交代を行い、第ニドライバーが残り10周を走り切ると完走となります。競技中は2台、もしくは3台が同時進行で走行します。

大会の4、5日目はエンデュランスだけ行われるので、チームはこれだけに集中し、前夜に作戦会議をして臨みます。20周をどういう戦略で走り切るのか、いつから燃費(電費)を気にした走行に切り替えるのか、どんなところが懸念事項か、警告ランプがついたらどのように対処するのか…など、綿密な準備をして約20kmの耐久走行に挑むのです。

よくあるトラブルとしては、燃費です。計算した燃料タンクの容量もしくはバッテリーの容量が足りなくて止まってしまうことがたびたびあります。気温が上がると、水温や油温、バッテリーやモーターの温度が上がりすぎてしまうことも注意事項です。そしてなによりも、20kmという長距離走行は何度もリハーサルできることではないので、これまでにないトラブルが発生してしまうこともあります。どんなチームも最後まで安心することはできません。

ちなみに、ドライバー交代に与えられる時間は3分間で、これ以内であればタイム加算はないため、F1などのピット作業よりは余裕をもって作業できます。ほかにもドライバー交代のエリアに入れるのは3人までで、それを超えるとペナルティポイントが課せられます。

  • 効率(100点)

効率審査は、エンデュランス中の燃費/電費を競う審査です。もちろん、少ないエネルギーで走った方が点数は高くなります。

上位チームは大得点エンデュランスのタイムで稼ぎたい、下位チームは完走第一と考えるため、そこまで重視される審査ではありません。

 

ICVクラスでは、基本的には単気筒エンジンのほうが燃費が良く、有利になります。また、エンジン燃調をきちんと合わせたチームが、好順位にいます。

EVクラスでは、システム自体の省電費性、内部抵抗の少なさなどが関わってくるため、市販流用となるメーカーの供給品のほうが良い点数が出がちです。

また、トラブルなどで燃費/電費走行をすると、完走してみれば好成績になることもあります。


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