このページでは、学生フォーミュラの審査(競技)を解説していきます。

3種類の静的審査と5種類の動的審査(走行競技)があります。8審査を合算し、総合優勝を争います(満点:1000点)。

審査の細かいルールは世界共通ルールブック、もしくは日本大会のローカルルールをご覧ください。(公式サイト:ルールのページ

静的審査(計325点)

エコパに行く前に、オンラインで静的審査が開催されます(2019年以前は大会期間中に併催)。残念ながら、基本的に非公開で行われます。

  • デザイン審査(150点)

デザイン審査は、文字通りマシン設計上について評価する審査です。設計の妥当さ、斬新さ、工夫性などを評価します。マシンの優良さ、速さにもつながってくるため、静的審査の中で最も重視される項目です。

事前提出資料(デザインブリーフィング)を基に、車体本体をカメラに映しつつ審査員と設計についてディスカッションする形で審査は進んでいきます。チームはまず15分間マシンについて説明し、その後45分間、サスペンション・パワートレイン・ボディの3部門についてそれぞれ質疑応答を行います。

デザイン審査の上位3チームは、大会期間中に現地で行われる「デザインファイナル」という公開決勝に臨みます。一般公開される唯一の静的審査で、チームがどのように設計をしているのかを知ることができます。

2022年 デザイン審査の成績 チーム
1位 京都工芸繊維大学
2位 大阪大学
3位 名古屋大学(EV)
  • コスト審査(100点)

コスト審査は、事前に提出した「コストレポート」に沿って、「マシン製造にかかる費用」「算出した費用や図面の正確性」「製造上の問題が発生した際の対応方法」の3項目を評価します。

コストレポートは、図面や実車写真と金額の計算に違いがないかを調査されます。また、口頭試問ではコストレポートに関する質疑応答と、「リアルケースシナリオ」、審査前に投げかけられる製造上の問題点に対する対処の説明、をします。

「マシンにかかる費用(プライス)」に関しては、ウィングや複雑なエアロを搭載しない方が点数は高くなりやすく、いかにコストを抑えていいマシンを作るかという考え方が大切になります。

2022年 コスト審査の結果 チーム
1位 京都工芸繊維大学
2位 京都大学
3位 神戸大学
  • プレゼンテーション審査(75点)

プレゼン審査では、チームのプレゼンテーション能力を評価します。審査員を会社役員に見立て、マシンの販売案を発表する形で審査が行われます。

10分間、チームはプレゼン発表をし、その後審査員からの質問を受ける形で審査は進みます。

プレゼンで魅力を伝える能力が主に審査されますが、内容にSDGsなどの時事的問題を取り入れて質を向上させることも重要な要素になってきます。

2022年 プレゼン審査の結果 チーム
1位 京都工芸繊維大学
2位 岐阜大学
3位 大阪大学

車検

動的審査へ行く前に、車検という壁を越える必要があります。マシンがルールに則ったものであるかをチェックされます。車検には技術車検、騒音テスト(EVの場合はEV車検、機械車検、レインテスト)チルトテーブル試験、ブレーキ試験があります。これらすべてをクリアしない限り、動的審査へ出場することはできません。

車検にクリアすると、それぞれ合格シールがもらえる

技術車検、EV車検、機械車検は、車検テントの中で、車検員とともに車両の各部をチェックします。説明が必要な箇所は口頭だったり図で説明し、パーツを外す必要がある場合は外し、ルールに適合しているかを確認してもらいます。きちんと説明できるように対策していないと、スムーズには合格できません。

決められた人数のみしかテントには入れないため、担当者が入れ替わり立ち代わり説明をする

騒音試験は、ICVマシンのマフラーの近くで音を拾い、規定音量に収まっているかをチェックします。アイドリング回転数で103デシベル(地下鉄構内くらい)、全回転域で110デシベル(クラクションくらい)が規定音量です。

レインテストは、EVマシンの上から雨のように水を降らせ、マシンに異常が起きないことをチェックします。2分間水をかけ、その後2分待機し、IMD(絶縁監視システム)が反応しなければ合格です。

チルトテーブル試験は、ある程度傾いた場合でもマシンがひっくり返らないことや、オイルや燃料の漏れがないことをチェックします。チルトテーブルと呼ばれる台に乗せ、傾けること確認します。市販車ではお目にかかれない試験で、少しもの珍しい光景です。

ブレーキ試験は、ブレーキが確実に利き、4輪すべてでロックが起こることをチェックします。ある程度の速度まで加速しフルブレーキ、その時に4輪すべてのタイヤがロックしていれば合格です。これの突破に苦労するチームは多く、少しでもバランスがおかしかったり利きが弱いと合格できません。

4人の検査員が1輪ずつバッチリ確認する

動的審査(計675点)

  • スキッドパッド(75点)

8の字に作られたコースで左右それぞれの円を2周、計4周しタイムを競う競技です。マシンの旋回性能が試されます。略して「スキパ」。

コースは下のように直径15.25mの円が2つ、走路幅は3mです。真ん中の直線から入り、まずは右円を2周、そして左円を2周します。もしコース枠のコーンに当たってしまった場合、1個ごとに0.125秒が加算されます。

学生フォーミュラ世界共通ルールブック「FSAE_Rules_2023_V2.pdf」より

4周走った内、円1周の一番速かったタイムで順位が決まります。上位に入るためには5秒前半、1位を争うには5秒を切れるかどうかが勝負になります。

2022年大会 スキパの結果 チーム タイム
1位 京都工芸繊維大学 4.998秒
2位 名城大学 5.103秒
3位 千葉大学 5.182秒
  • アクセラレーション(100点)

75mの直線をゼロスタートで走りぬき、そのタイムを競います。マシンの加速性能が試されます。

もちろんパワーがあるマシンが有利になります。4気筒エンジンを積んだマシンや、EVクラスのマシンが強さを発揮します。エアロがあるマシンの中には、フラップ角度を水平にして空気抵抗を減らし、タイムを伸ばそうとするチームもあります。

2022年大会 アクセラの結果 チーム タイム
1位 千葉大学 4.236秒
2位 京都工芸繊維大学 4.351秒
3位 日本自動車大学校 4.511秒
  • オートクロス(125点)

各大会でそれぞれのコースを敷設し、1周のラップタイムを競います。

日本大会のオートクロス図(2022年)

直線、スラローム、シケイン、低速コーナーなどすべての要素が含まれていて、マシンの総合性能が問われます。このオートクロスでその年の最速マシンが決まると言っても過言ではないでしょう。

1回で2周タイムアタックするチャンスを得られます。待機列ができることや、枠の時間を考えると、計4周ほどの挑戦ができます。

どのチームもエンデュランス(後述)のことを考え、、エースドライバーと第2ドライバーがそれぞれ2周ずつ走るのが通常の戦い方になってきます。そのために「2周じゃ足りない、もう一回チャレンジしたい!」という感想がよく聞かれます。数少ないチャンスで全力を出し切れるか、ドライバーのテクニックが試される競技です。

2022年大会 オートクロスの結果 チーム タイム
1位 京都工芸繊維大学 57.296秒
2位 名城大学 58.974秒
3位 岐阜大学 60.018秒

このオートクロスのタイムは、この後のエンデュランスの出場権が得られるかどうかも左右します。全体トップタイムから規定以上遅いタイムだと、エンデュランスに出場することはできません。

  • エンデュランス(275点)

先ほどのオートクロスのコースを2人のドライバーで10周ずつ、計20周の耐久走行を行います。距離は約20km、時間にして30分程です。

大会の最終競技に位置し、ここでの完走がチームにとって一番の目標になります。耐久性、燃費・電費に加え、真夏なので熱問題やドライバーの集中力などあらゆる要素が大切になってきます。全競技中最も大きいポイントが与えられる競技なので、チームは残っている力をすべて注ぎ込んで挑みます。

第一ドライバーがまず出走し、10周走り切るとピットインします。そこでドライバー交代を行い、第ニドライバーが残り10周を走り切ると完走となります。競技中は2台、もしくは3台が同時進行で走行します。

大会の4、5日目はエンデュランスだけ行われるので、チームはこれだけに集中し、前夜に作戦会議をして臨みます。どのタイミングでタイムを出すのか、いつから燃費(電費)を気にした走行に切り替えるのか、どんなところが懸念事項か、警告ランプがついたらどのように対処するのか…など、綿密な準備をして約20km、25分の耐久走行に挑むのです。

よくあるトラブルとしては、燃費です。計算した燃料タンクの容量もしくはバッテリーの容量が足りなくて止まってしまうことがたびたびあります。気温が上がると、水温や油温が上がりすぎてしまうことも注意事項です。そしてなによりも、20kmという長距離走行は何度もリハーサルできることではないので、これまでにないトラブルが発生してしまうこともあります。どんなチームも最後まで安心することはできません。

ちなみに、ドライバー交代の制限時間は3分間。これを過ぎるとラップタイムに加算されていきます。ほかにもドライバー交代のエリアに入れるのは3人までで、それを超えるとペナルティポイントが課せられます。

2022年 エンデュランスの結果 チーム
1位 京都工芸繊維大学
2位 京都大学
3位 名城大学
  • 効率(100点)

効率は、エンデュランスを完走できたチームのみを対象に、どのくらいの燃費・電費で走行できたかを評価します。もちろん、少ないエネルギーで走った方が点数は高くなります。

エンデュランスを走った中で、1ラップあたりどの程度の燃料、電気を使ったかを競います。エンデュランス後に燃料、電気がどの程度残っているかを量り、そこから点数を算出します。算出方法は複雑なので、詳しくは冒頭にあるルールページをご覧ください。

基本的にEVクラスのほうが点数が高くなるルールになっており、ここにもEVへ移行する理由がうかがえます。

2022年 効率の結果 チーム
1位 静岡理工科大学(EV)
2位 トヨタ東京自動車大学校(EV)
3位 日本工業大学

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