このページでは、学生フォーミュラのマシンについて解説していきたいと思います。
主にレギュレーションの基づいて、近年の様子もあわせて説明していきます!
車体
まずは、マシンの全体についてです。
学生フォーミュラの車両は、オープンホイール(フォーミュラカー)でないといけません。つまりは、タイヤが上や横から見える状態でないといけません。
サイズとしては、長さが2.5~3m、幅が1.3m、高さは1.2mほどのマシンが多いです。なので、軽自動車より一回り小さいくらいです。日本大会のコースは世界に比べて入り組んだコース設定となっていて、そのため車体サイズは比較的小さくなりがちです。
重さは200kg前後、だいたいトラ🐯と同じぐらいらしいです(?)。軽いほど動きが軽快になるため、車重は特に重要視されます。200kgを切ることがひとつの目標になります。
車両の骨格をなすフレームには、90%の車両には、パイプフレーム(スペースフレーム)が採用されています。昔のレーシングカーで採用されたものです。鉄パイプと溶接機さえあれば作れてしまうので、設備が限られる学生にはもってこいなのです。それでも、何十ヶ所も溶接しなければならないため、大変には変わりありません。
一方で、カーボンモノコックフレームも存在します。現在のレーシングカー、またF1と同じものです。大掛かりな設備と手間が必要になり、このハードルの高さから2023年の採用チームは68チーム中たったの5チームだけでした。
モノコックフレームの利点は、重量に対して堅さ(剛性)が高いことです。レーシングカーではマシン全体のよじれなさ(剛性)が大事になるので、その点では欠かせないメリットがあります。
ちなみに変わり種として、上智大学はアルミハニカムモノコックフレームを採用しています。十分な軽量・剛性を確保しつつ、カーボンモノコックよりも製作性が優れていることが利点です。
エンジン・モーター
- エンジン
ICV(エンジン)クラスで使われるエンジンは、4サイクルのガソリンエンジンでないといけません。排気量は710ccまでで、2サイクルやハイブリッド、ディーゼルエンジンは禁止されています。
使われるエンジンは基本的にバイク用のエンジンです。気筒数、排気量は様々で、そのチームのマシンの特色によって決められます。
気筒数 | 主なエンジン名(グレードは省略) |
単気筒 | ヤマハYZ450、ホンダCRF450、KTM690、など |
2気筒 | ヤマハMT-07、スズキV-Strome、カワサキER650、ホンダCB500 |
4気筒 | ホンダCBR600RR、カワサキZX-6R、スズキGSX-R600、ヤマハYZF-R6など |
マシンを軽くするなら単気筒、パワーを出すなら4気筒、バランスを求めるなら2気筒、といった傾向があります。
- EVモーター
EVクラスのモーターは自由に選択することができます。出力、個数、直流交流など、幅広く選ぶことができます。
大まかな選択肢としては、企業からの無償貸与と自費で購入する2択があります。
無償貸与を選択すると、ホンダ、日産、三菱、デンソー、ヤマハの5種類が選択できます。出力、サイズ、またサポート体制の評価を考え、チームにあったものを選びます。
一方の自費で購入。ある程度ノウハウを得たチームは、さらにハイレベルな性能を追求するため市販品を購入します。無償貸与品はどれもサイズが大きかったりや制御の自由度が低いなど、トップレベルを求めるには満足できない部分があります。メーカーはAMK、EMRAXなどがよく採用されます。
基本的にはドライバー後方に1基のモーターが詰まれる方式のマシンがほとんどです。マシン横もしくは後ろににバッテリーを配置し、インバーター/モーターを動かし、リア2輪で走る構造が主流です。
一方で名古屋大学は国内唯一、4輪それぞれにモーターを配置する4輪独立駆動のマシンに挑戦しています。さながら高度な市販車のように4輪のモーターの力具合をプログラムし、旋回性能を高めるという難しいシステムに挑戦しています。
エアロ
多くの参加チームは、マシンにエアロを装着しています。フロントウィング、リアウィングを始め、サイドウィングやディフューザー、様々なフラップを付けるマシンもあります。
エアロに使われる素材は、一般的なレーシングカーと同じカーボン(CPRP)や繊維強化プラスチック(GFRP)、場合によっては木板を使用することもあります。カーボンについて細かく述べると、主流は学生らで作りやすいウェットカーボンです。有力チームの中には、焼き窯などの設備が必要になるドライカーボンを使うチームもありますが、箇所ごとに使い分けるパターンが大半です。
エアロの話をするなら、京都大学が欠かせません。このチームは、例年トップレベルな完成度のエアロマシンを持ち込んできます。2024年はバネ下にエアロの多くを配置する特殊なマシンを作り上げてきました。
ちなみに、学生フォーミュラの中では常に「エアロが必要か否か」の論争があります。日本大会の周回コースは速度域が低いため、大きなダウンフォースが出ません。このため、エアロを取っ払って軽くし、そして足回りのセッティングに費やしたほうがいい、との考え方が半分です。
タイヤ・ホイール
学生フォーミュラのタイヤ関連は、「ホイールが4つついていること」「8インチ以上のホイールサイズ」という以外に大きな縛りはありません。サイズ選択はほとんど自由です。
走行性能を高めるためスリックタイヤが主に選択され、特にフージャー(Hoosier)というメーカーの専用タイヤが9割のチームで使われてます。
フージャータイヤホームページ(Series Spec → Formula SAE参照)
ちなみに、「16.0 x 6.0-10」というサイズ表記は、「タイヤ高さ16インチ × タイヤ幅6インチ – ホイールサイズ10インチ」と読み取ります。
つまり、フージャー製のタイヤは幅15~20cmです。軽自動車から小型車くらいのサイズですね。ちなみに、ホイールサイズは10インチ用と13インチ用があり、ウェット路面用の溝付きタイヤもラインナップされています。
他には、グッドイヤーとコンチネンタルが、それぞれ専用13インチタイヤを用意しています。
また、市販車用タイヤを使うチームもあります。ただし、市販車用タイヤだと軽い学生フォーミュラには堅すぎるため難しいという話があり、数チームに留まっています。値段からか、ダンロップ ディレッツアが人気です。
ホイールについては、上記のフージャータイヤが10インチと13インチ用のみのラインナップということから、10インチと13インチホイールが大多数です。
専用ホイールを用意するのはOZホイールとエンケイです。OZホイールは10と13インチの両方、材質はマグネシウムとアルミ、さらにセンターロック式と4穴の取り付け方法を選べます。エンケイは10インチのみです。
他には、KAIZERやBRAID、RAYSなどが主流です。WATANABE、WORK、Worksbellなどを使用するチームもあります。
近年は10インチを選ぶチームが増えてきています。理由は、マシンを大幅に軽量化できるからです。ただ、足回りの設計をコンパクトに設計したり、タイヤの熱問題が発生したりするので、難しいところです。
コックピット(運転席)
最後に、ドライバーが座る空間を見ていきましょう。
まず、シートはほとんどのチームが自作で、FRPから作ります。どうしたらドライバーが心地よく運転できるかを考え、実際のドライバーから型をとって作られます。
インパネはチームの個性や、電子工作の技術が見えます。ちなみに、ステアリングホイール(ハンドル)を自作するチームも多くあります。
また、シフトレバーに目を向けると、シーケンシャルシフトとパドルシフトがあります。
シーケンシャルシフトは、レバーを後ろに倒すとギアアップ、前に倒すとギアダウン。バイクのギアは元々シーケンシャルなので、学生フォーミュラ会の中では一番シンプルで作りやすいギアシステムです。
もう一つ、パドルシフトがあります。近年のモータースポーツや市販車にも採用が多い、ハンドルの左右に2つのパドル(プレート)があり、それでシフトアップするものです。ワイヤーでギアボックスまでつなげる機械式タイプもあれば、電気信号を送ってギアボックスはエア圧や電動で動かすリモートタイプもあります。
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