学Fはどのチーム、どの学生にとってもチャレンジとなるのだが、近畿大学フォーミュラプロジェクトの23年マシン「KFR-20」は特に「チャレンジ」が詰め込まれている。

「近畿大学フォーミュラプロジェクトは、サイドエンジン方式のマシンを製作する」

これが一番衝撃だった。

サイドエンジンのマシン、ドライバーの横にエンジンを置く方式はたびたび登場してきた。特に東京大学チームが昨年までそれで、2009年には総合優勝を獲得している。だが、同チームは昨年いっぱいでEV転向となり、サイドエンジンマシンはエントリーから消える見通しだった。

しかし、新たに近畿大学KFPがこの方式を採ることに決めた。正式名は「S-FR Packaging」。フロントミッドシップのFRマシンをベースにして、ホイールベースやドライブシャフト長を押さえるためにドライバー横にエンジンを置いた、というのが正しいパッケージの説明となる。

このレイアウトにした理由は、コンセプトである「Driving Pleasure」に向けて、小さい慣性モーメント=曲がりやすいマシンにするためだという。重量物がマシン中心に寄るため、理想に近づくというわけだ。

マシンの根本からの変更になるわけだが、この大きな決断に対しチームは相当悩んだという。実際に最終決定されたのは、標準より2か月以上遅い23年1月だった。現状から小さく改善していくよりも、ここを変換期として、一気に進むことを目指した。

以前のレギュレーション変更によりサイドエンジンマシンは不利になったと聞くが、運動性能は理想形であるに違いない。インパクトも高いし、注目の一台だ。

マシンのイノベーションはこれだけに留まらない。

一番気になったのは「可変吸気ファンネル」だ。サージタンクの入り口管長の長さを走行中に自動で変わるようにし、十分なエンジントルクを維持できるようにするというものだ。これにより、レスポンスのいい理想的なエンジンを目指す。

海外大会では採用例があったそうだが、日本大会ではおそらく初。現時点でどこまで実現できるかは未知数とのことだが、担当者は「パイオニアになりたい」と意欲満々だった。

他にも電磁シフターやカーボンサスアームなど、多くの項目に挑戦する。

「チャレンジ」を成功させ、このマシンで全競技完走、総合順位では総合25位以上を目標とし、ジャンプアップを狙う。

 

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