2023年現在、国内チームでFSAE海外大会に参加しているのは、東京電機大学TDURacingだけだ。

近年はオーストラリア大会に的を絞って参加しているTDURacing。その1年の活動を紹介する。

年間スケジュール

FSAEオーストラリア大会は、例年12月の初めに行われる。オーストラリア大会を目指す場合、次シーズンはここから始まる。

12月

5000キロメートル離れた地で戦ったあと、帰国。まずはスポンサー対応から始まる。国内チームと同じように、報告会や報告書の作成をして、支援を頂いた企業へ挨拶をしていく。

1~3月

その報告が続く年明け、ここでようやくマシンが帰国する。車両や工具などの備品は、行きは飛行機だが、帰りは安い船便で輸送するという。1ヶ月経って、ようやく戦ったマシンは帰ってくる。

そうしているうちに、今度は次の大会の企画が始まる。反省点を見直したり、改善点を洗い出しながら、次のマシンへの構想を決めていく。

4~7月

春になり、いろいろな活動に負けないように新人勧誘を行う。

それと同時に、本格的な設計がスタート。

設計がある程度までくると、製作に取り掛かる。日本大会出場チームの製作集中期は春休みだが、オーストラリア大会に出る場合は夏休みが製作の最盛期になる。暑い中で、熱を発する工作機械をひたすら使用する

9、10月

初旬に行われる日本大会の裏で、マシンはおおまかに完成、シェイクダウンとなる。ここから、マシンの熟成期間に入る。テストランだ。

また、このころには3ケ月後の渡航、輸送の計画を完全に決め、企業に依頼をする必要がある。海外大会へ行くとなると、このレベルのスケジュール感が必要になるのだ。

11月

大会1ヶ月前になると、もう積み込みを始めなければならない。組み立て式の大きな木箱へマシンと備品を積む。半月前までには終わらせ、マシンは一足先にオーストラリアへ向かう。

写真提供:東京電機大学TDURacing
写真提供:東京電機大学TDURacing 

メンバーは、大会1週間前をめどに現地へ向かう。約10時間のフライトだ。

こうして、大会期間を迎える。

大会期間のスケジュール

さて、ここからは現地での過ごし方だ。前述の通り、だいたい大会1週間前に現地には到着する。

到着日(現地1日目)

まずは、買い出しから始まる。食料、静的?や、重荷になるオイル類、飛行機では運びにくいバッテリーなどを調達する。

現地2日目

ここで、初めてマシンと再会する。輸送会社から受け取りを行い、メンテナンスや走行までの最終仕上げを行う。

また、静的審査の準備をする。過去の日本大会でもそうだったように、静的審査は大会期間中に現地で行われる。

3日目以降

ここから、大会に向けた最終仕上げ、テスト走行をしていく。場所は、ホンダのオーストラリア営業本部だったり、仲のいい大学の敷地内などだ。

写真提供:東京電機大学TDURacing

こうして、本番の審査に挑んでいく。

気になる輸送費

海外大会の参加には、高額な予算が必要になるのは想像できる。滞在費なども多めにかかるが、国内参戦と最も違うのはマシン含むコンテナ輸送費だろう。

オーストラリアまで5000km。行きは航空便、帰りは船便を使っているTDURacingだが、その費用を聞いてみた。

回答としては「だいたい200万円くらい」だったそう。

ただし昨今の情勢から、昨年はその見積もりが2倍となったという。そういう事情もあって、昨年は出場辞退している。

ハードルは高い…か?

ここまで見ると、基本的に過ごし方は普通の国内チームとは変わらない。スケジュール立ても、普通の学生にもそれほど難しいことではないはずだ。

また予算的にも、TDURacingが図抜けて多いわけではない。マシン自体の製作費用は、単純なパイプフレームでエアロレスな車両なため、比較的安いほう。となれば、高額な遠征費用に対し、総予算は他チームと同じような範囲で収まっているだろう。

「言語の壁、文化の壁は大したことない」、それがチームの総意見。

実際、チームメンバーらは自慢できるほどの英語力は持ち合わせていないそう。チームリーダーの中根氏でも、英語力を測る試験を受けたことがない様子だった。それでも過去のメンバーには、現地の工場に飛び込みで相談、カタコトの英語ながら、壊れた部品の製作を依頼することに成功した体験もあるという。

逆にオーストラリアとしても、国籍の壁はない。現地の警察に、夜中の作業中に駆け付けられることもあったが、事情を説明するとエールを送ってもらえたこともあったという。ライバルであるチームも、戦っているとき以外は良き仲間で、食事会などに快く招待してくれるそうだ。

「意外と何とかなる」、FAの小平先生はそう話してくれた。

一緒に海外大会に参加しないか?

「なぜ海外大会に行くチームが少ないか?」。取材時はその疑問を強く投げかけられた。

言葉、予算、それらは有力チームにとっては、TDURacingよりも低い壁ではないだろうか? あとはTDURacingに及ぶ挑戦心を持てるかどうかかもしれない。

過去には、年間3大会に出場をしたこともあるそう。走行テストしながら次のマシンを作って…と、とにかく過酷な挑戦をしていたこともあった。

「目指すは世界一のFSAEチーム」このチャレンジ精神、あなたは超えられるか?

東京電機大学フォーミュラSAEプロジェクト ホームページ