東北大学フォーミュラチーム

 2013年から参戦開始、最初からEVクラス一筋で参加しているチーム。大学中心から活動場所まで2km程度離れており、アップダウンもある道は自転車で15分と、国内で最も不遇な環境にいる(JP調べ)。
 これまで2017年のエンデュランス17周到達が最高と全競技はおろかエンデュランス完走も果たせていなかったが、昨年ついに全競技完走を果たすことに成功した。

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10車両目にしてついにの全競技完走をした生粋のEVチーム。11台目は速さへの挑戦がなされる。

チーム設立13年、EV歴も同じ、長らくかかったがついに昨年に全競技完走を達成した。フレームを前年から継続使用、2月中という異例時期にシェイクダウンし、その後も信頼性向上へとテスト走行を積み重ねてきての結果だった。エンデュランス出走も7年ぶりのことで、大会にはなんとチーム創設時のOBも休みを取って駆けつけたそう。記念すべきチーム10台目の車両にて、念願の目標が達成されている。

ついに完走を果たしたことで、チームは新たな段階にしっかり進むことができそうだ。チームリーダーの門間さんは「今年(これから)は勝負しよう、攻めてみようと、その手始めの年となる」と話した。

それを受け今年の車両コンセプトは「勝負できるマシン」と設定している。速さへの挑戦をしていく車両となることが、ここに明確に表現された。

改善の柱は2点。①は旋回性能で、サスペンションジオメトリーから変更し、オートクロスを主眼に走りの限界性能の向上を図っている。ただチームにノウハウはなく設計は手探り、「今出せる本気で」と改善サイクルの一歩目でとなっている。またジオメトリのみではなく、フロントサスペンションはプルロッド化でダンパーをフレーム下部に配置、低重心化も図っている。

柱②はエルゴノミクス。昨年車両は「ドライバーはとんでもない姿勢だった」と表現するように、ステアリングは大型トラックのような角度で生えていたり、シートは走行中に体が浮いてしまうような形になっており、それによるドライビングへの影響もあっただろうという感想も出るほどだったそう。

そこで今年は、レーシングカート用だったシートを、ドライバーに合ったものを製作するように、またリクライン姿勢(規定2種類のうち寝た姿勢の方)に変更した。ステアリングには、ここ数年なかったユニバーサルジョイントで適切な角度を作り出せるように。ラックアンドピニオンやキャスター角も見直しステア反力の軽減も狙っている。これら改善の効果は、スピードをあまり出さないシェイクダウン走行でも効果がわかるほどだったそう。

また、モーター制御の面も大きな取り組みがある。国内で多くのチームが導入している制御機器「Micro Auto Box」を新たに導入した。これまでのマイコン制御でも大きな問題なく調整や変更はできていたが、それをより簡易化するための導入だそう。ホンダの貸与モーターユニットは標準で2機のモーターが入っており、さらに市販車用だけあって大出力が出せる。この活用度合いがさらに上がりそうだ。

そして、外装カウルは自らで製作する割合が増えた。これまではすべて外注だったが、今年から型製作のみを外注にし、FRPの貼りこみや離型などは自分たちでするようにしている。早速自信作となったようで、学生フォーミュラ界でも随一の綺麗さになったと話していた。

大会目標は、このチームの戦略がうかがい知れる。順位などの相対評価ではなく、「決まり切った目標だと活動へのモチベーションを保つことができる」として、比較的絶対的な指標に近い得点で「525点」と定めた。ちなみにこの点数は昨年の335.04点から大幅アップであるが「プレゼンやデザインも勝負の年として、できることをやってみてどういう評価がもらえるか確かめたい」と、この挑戦を楽しんでいる様子がうかがい知れる。

4月20日、全体9番手のシェイクダウンの速さだが、それでも約1か月遅れの実施だったそう。ただ同月27日に早速テストランに勤しんでいるようで、昨年に引き続き車両は堅調な仕上がりが予想される。

東北大学2025年車両「TF25」スペック
フレーム鋼管パイプフレーム
モーターホンダ製貸与品(2モーターユニット)
ホイール13インチ