15年ぶりの出走へ、ただ目指すは表彰台!? – #C55 国士舘大学 Kokushikan Mobility Club

国士館モビリティクラブ。近年の学生フォーミュラでは全くと言っていいほど話題になったことはなかったチームである。しかし、今関係者の中ではトップレベルに注目されている存在になった。それはなぜか。

 

国士館大学の学生フォーミュラの歴史は長い。2000年に日本の合同チームがアメリカ大会に初参戦した際には名前があった。翌01年に神奈川工科大学が初めて単独参加すると、その翌02年にはこの国士館大と上智大が単独参戦をしている。また2003年はアメリカ大会に参加していると同時に、第1回日本大会にも参加した。

日本大会開催以前の合同チームに名前がある

 

その日本大会では2位、3位、3位と3回大会まで表彰台順位を並べている。ただ、2009年大会の出走を最後に、競技での走行はしていない。

なぜこのようなチームが今年に注目度を上げたかといえば、そのチーム構成にある。

通常、車両を走らせられないチームは新入生を集められず、なかなか低迷を抜け出せない。そこでチームリーダーの長尾氏は、他チームから手伝いメンバーを呼ぶ「飛び道具」ともいえる手段をとった。収集元は5大学にもおよび、メンバーの半分はこのような面子が揃う。こうして、15年ぶりの出走の目途を立てることが叶った。

同時に、チーム名を「Kokushikan Mobility Club」に変更している。

特筆すべき想定マシンポテンシャル

集まったメンバーは、他チームに手を貸すだけあって意気や経験は十分。それゆえ、上位を目指す目標を立てた。

目指すは総合3位だという。戦略としては、ノウハウがものを言う静的審査はある程度の順位を確保し、動的審査で一気に得点を稼ぐ方針だ。特にスキッドパッド、オートクロスでは1位を狙っている。

「國士零式」のCAD画像

 

上位を狙うには必須なマシンのポテンシャル。速さの根拠には「軽量・低重心で要点は抑えて、エアロで差をつける」ということを語った。

まずシャシー系では、フレームは製作性を意識してシンプルで軽量なつくりに。またアルミリアバルクヘッドやPOU(プッシュロッド-オン-アップライト)を採用し、近年のトレンドは抑えている。

重要になるエアロ系では、フロント・リアウィング、そしてサイドエアロを搭載しほぼフルエアロ状態だ。それぞれ造形にはかなりこだわり、シミュレーション上では上位チームの1.5倍以上のダウンフォースを得られる結果が出ているという。この数値こそが、上位を目指すにふさわしいと公言する源になっている。

パーツ類では、イケヤフォーミュラ社が学生フォーミュラ向けに開発したLSDが、九州工業大学とともに初めて使用される。大きな性能差を生むわけではないが、注目点の一つ。

また、ダンパーにはKW製の4Way専用品、最新のものを搭載する予定だそう。他にOZ Racingの10インチホイールや、エンジン制御にHKSのF-con Vproなど、一級品をそろえた。

製作場所は屋外、風が吹きすさぶ

 

ただし、万事有望ではない。懸念点の一つに、パワートレイン系を挙げた。手伝いに召集されたメンバーを含めてエンジンに卓越した人はおらず、補器類を含め戦闘力向上の策は施せていないそう。コースにストレート区間はほぼないとはいえ、加速の鋭さなどでは上位勢に後れを取る可能性がある。

また、ドライバー体制も弱点として挙げている。競技を経験したことのあるメンバーはおらず、他チームに比べて車両やコースへの慣れというものは全くない。対策として、早めのシェイクダウンやテストランを多く積ませることを図っている。

対照的に苦しい金銭面

最後に言及しておきたいのが、金銭事情だ。

このチームの資金不足は圧倒的。なにしろ、車両製作費の大半は、各個人の財布から賄われているというのだ。学校・研究室からも予算をもらっているそうだが、大部分はメンバー自らが働いた分から投じられている。他にそんなチームは存在しない。

大会出場まで資金は持つのかということも、心配してしまう。

 

そして、今ならこの国内最速を目指す車両の手助けができる。

現在、Kokushikan Mobility Clubはクラウドファンディングを実施している。弱点であるドライバー練習などに活用するとのことで、「15年ぶりの出走で上位入賞」という前代未聞のプロジェクトの達成をぜひ支えてあげてほしい。

学生フォーミュラ大会15年ぶりの出走を目指すマシンの製作資金募集!【国士館大学】 – CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)

(左)昨年11月にインタープロトシリーズにて製作途中のフレームを展示した

 

第1回日本大会の2位チームは、期待通りの速さを発揮して表彰台に上ることができるのか?要注目である。

車両名 國士零式
フレーム 鋼管パイプフレーム
エンジン元 HONDA CBR600RR(4気筒)
ホイールサイズ 10インチ
PAGE TOP